「夫と一緒に見るのはなんだか忍びなくて……録画して、ひとりでこっそり楽しんでいます」−−そんな40代以上の女性も多いのが、NHK総合テレビで、開始当初は火曜、今は金曜の夜10時台に放送されているドラマ枠が“ドラマ10”。おもに女性視聴者を意識した番組作りが、40、50代女性からの支持を集めている。
「“月9”を卒業してから10年−−40代以上の女性たちが『私のためにドラマを作ってくれている』という手応えを感じながら見られるのが、ドラマ10なんです!」
そう語るのは、コラムニストのペリー荻野さん。今回、本誌は40代以上の主婦100人に「ドラマ10の中でも、特に印象に残っている作品」を緊急アンケート。その結果をペリーさんに分析してもらった。
アンケートで堂々の1位に輝いたのが、“NHKっぽくないラブシーン”が話題となり、映画化までされた、鈴木京香主演の『セカンドバージン』(’10年放送)。物語は、シングルマザーのるい(鈴木)は、仕事一筋の辣腕編集者。17歳年下の行(長谷川博己)と出会い、忘れていた性の甘美さに目覚め逢瀬を重ねるが……やがて行が姿を消してしまう。
「やはりトップにきましたか!この作品はドラマ10の象徴ともいえる成功作です。タイトルもうまい!大人の女性なら誰しも『え!?何でわかるの?』と思ってしまうんですよね。しばらく熱情やエロスから遠ざかってしまった世代に響きました。“月9”の恋愛に共感していた20代のころ、自分はトップを走っていると思っていたけれど、30代で少し“息切れ”を感じ始め、40代になると、『あれ?いつの間にか周回遅れしている?』と、立ち位置がわからなくなってくる。女として『まだイケる』のか、『もうダメ』なのか−−振り子のように揺れる思いを抱え、どんよりとした心地で生きている女性も多いのです」(ペリーさん・以下同)
2位は、石田ゆり子がヒロインを演じた『コントレール〜罪と恋〜』(’16年放送)。年齢を重ねたうえでの石田ゆり子のかわいらしさにも、主婦からの声が多かった。物語は、無差別殺人事件で夫を失った文(石田)は「コントレール(ひこうき雲)」というドライブインを細々と営んでいる。そこにトラックドライバーの暸司(井浦新)が訪れ、2人は激しい恋に落ちる。だが暸司は夫を殺した男だった。
「この作品には『誰も幸せになっていない』という“冷静さ”があります。ドラマ10では、決してきれいなハッピーエンドじゃない人生を提示してくれる。結婚したからって、それで“めでたし、めでたし”なんかじゃない−−それを身を持って経験している大人の女性だからこそ「私も……」と思えるのがドラマ10なんです」
3位は、檀れい主演の『八日目の蝉』(’10年放送)。物語は、実らぬ不倫の愛の果てに、希和子(檀)は、赤ちゃんを産めぬ体になっていた。もうろうとした意識の中で、愛した男の妻の産んだ赤ちゃんを奪い逃亡。自分の子として育てるが……5年半後、希和子は刑事についに捕えられてしまう。
「“幸せな結末ではない”昼ドラのようなストーリーにもかかわらず、そのドロドロとした愛憎劇がおしゃれに描かれています。“脚本家の力”と“美しい映像”というドラマ10の魅力がよく表れている作品ですね」
4位は、ラストを迎えたばかりの原田知世主演の『運命に、似た恋』(’16年放送)。物語は、クリーニング店で懸命に働くシングルマザーのカスミ(原田)には少女のころ、再会を誓った少年がいた。ある日、彼女の前に新進気鋭のデザイナー・ユーリ(斎藤工)が現れ、生きる世界の違う2人が運命の恋に落ちていくが……。
「原田知世さんに限らずドラマ10に主演する女優さんは、その美しさをあえて強調せず、メークに“すっぴん感”があり、ヘアも崩し気味と、わざとくたびれた雰囲気を出しています。そこがリアル!原田さんがクリーニング店や清掃のパートとして働いているのも、自分自身を投影しやすくていいんです」
5位に選ばれたのは、上戸彩と飯島直子がダブルヒロインの『いつか陽のあたる場所で』(’13年放送)。物語は、初めて愛した男のために罪を犯してしまった芭子(上戸)。7年の刑を終え出所した彼女を出迎えたのは、刑務所で親友になった綾香(飯島)だった。2人は重荷を背負いながらも、寄り添うように新たな道を歩み始める。
「女性に好かれる上戸彩さん、飯島直子さんが前科のある女性をけなげに演じたことで共感を呼びました。これはNHKではなく外部制作会社の作品。2時間ドラマが減少した今、ドラマ作りに定評のある制作会社が生き残りを懸けて、しのぎを削っています。結果的に、厳選された良質のドラマを、私たちは見られるようになりました。これはドラマ10も例外ではありません」