image

 

6月24日夜、人気アイドルグループ「欅坂46」が千葉・幕張メッセで行った握手会で、発煙筒がたかれる事件が発生した。札幌市・無職の男(24)が現場で取り押さえられ、果物ナイフを所持していた容疑で逮捕された。男はメンバーの名を挙げ、「刺して殺そうと思った」と供述しているという。

 

14年5月にもAKB48の握手会で、メンバーとスタッフがノコギリを持った男に切りつけられる事件があった。なぜ、事件は再び起きてしまったのだろうか。

 

■すり抜けた荷物検査

 

実は記者もたまたま事件が起きた24日の昼間、欅坂46の握手会に参加していた。会場に入場するまで1時間半並んだ後に入口で手荷物検査をされたが、バッグを開けてチラッと見せるだけ。飲み物は本来スタッフの前で試飲することになっているが、それもなかった。

 

金属探知機は身体だけで荷物にはかざされず、「この検査、意味があるのだろうか」と感じるほど。犯人の男は自分のバッグを「忘れ物」と届け出ることで手荷物検査をかいくぐったそうだが、そこまでせずとも普通に持ち込めただろう。

 

■多すぎる参加者

 

3年前の事件後にチェック体制を強化したというが、それでも検査が緩くなるのは参加人数の多さも大きな要因だと思われる。欅坂46もAKB48も事件が起きたのは「全国握手会」。複雑な手順での申込みが必要な「個別握手会」と違い、店頭で購入可能なCDについてくる握手券を使えば誰でも参加できる。そのうえ24日の握手会では、券がなくても会場に入場できた。

 

同じ接近イベントでもAKB48の劇場公演では、劇場に入る前にロッカーに荷物を預け、貴重品などのみをカゴに入れ、備え付けの金属探知機をくぐってから入場する。本来なら握手会も同様にすべきだが、AKB48劇場の収容人数は500人ほど。欅坂46の全国握手会は16年4月時点で1万人が参加。とても追いつかないのが現状だろう。

 

■握手会をやめられない理由

 

「こんなに事件が起きるなら、握手会は廃止しろ」という意見もある。欅坂46の初回限定盤CDは現在4タイプ販売されており、それぞれに入っている曲やMVが違う。購入した分だけいろいろな曲が聴けて握手もできるとあって、学生などお金のないファンも複数枚購入する。

 

世間では、握手会は“一部の熱狂的ファンが何十枚もCDを買って少女と接触する空間”と思われがちだ。しかし実際に現場で見た限り、参加者は高校生や大学生とおぼしき女性がかなりの割合を占めていた。また小さい子ども連れの家族の姿もあるなど、世間のイメージよりも一般的層にまで普及している場なのだ。そのため握手会が廃止されればグループが経済的打撃を受けるだけでなく、こうした一般のファンの楽しみを奪うことにもなる。

 

さまざまな要因があるにせよ、3年前の教訓をすり抜け再び事件が起きてしまった。運営としても再び危機管理体制を見直す必要があるだろう。警備人数のさらなる増員、握手会に入場制限を設ける、そもそも荷物を会場に持ち込めないようにするなど、メンバーとファンが安心して交流できる空間づくりを強く求めたい。

関連カテゴリー:
関連タグ: