(撮影:松蔭浩之)
「人生はピンチだらけだと思います。でも、そのたびに緊張が続いていたら、さらに深刻になってしまう。私なんかは試練があれば、『ありがたい、自分を鍛えてくれるチャンスをいただいたんだ』と発想を変えるようにしています」
そう話すのは、鮮やかな“ゴールド・ジャケット”で颯爽と現れた小池百合子都知事(64)。東京都議会議員選挙を控え、分刻みのスケジュールを空けてまで都知事が「どうしても会いたかった」相手は、レスリングでオリンピック3連覇を果たし、世界選手権13連覇中で“霊長類最強女子”とも呼ばれる吉田沙保里選手(34)。ともに数々の“女性初”の偉業を成し遂げてきた2人が、「人生」「勝敗を分けるもの」について語ってくれました。
小池都知事は’92年にキャスターから政界に飛び込み、’16年には「崖から飛び降りる」覚悟で都知事選に出馬・当選するなど、数多くの挑戦をして勝利してきた。いっぽう“絶対王者”吉田選手は「負けられない」重圧を感じながら、アテネ、北京、ロンドンでオリンピック3連覇するなどの成績が讃えられ、’12年には国民栄誉賞も授与された。しかし、人生においてさまざまな困難やピンチに直面したという共通点も持つ。
吉田「レスリングは、失敗してもあきらめなければ後で挽回してポイントを取り返すことができる。それは、人生においても当てはまると思うんです」
小池「吉田選手は“霊長類最強女子”と呼ばれて、ひとつの憧れのモデルとして、みんなを勇気づけてきた。ずっとその姿を保ち、称号を抱えていくのは大変だろうとは思いますが、そのぶん、みんな期待していますので、自然体で勇気を与えていってくれたらなあと思うんです」
吉田「ありがとうございます。みなさんに期待される人生というのは、プレッシャーはもちろんありますけど、同じようにプレッシャーを抱えている人は他業種の方にも多くいる。『自分だけじゃないんだ』と思えると楽になります。まあ、オリンピック3連覇や連勝記録などを収めてしまっていますので、“霊長類最強女子”といわれても仕方ないかな(笑)」
小池「最近では後進を育てるほうもなさってるとうかがいました」
吉田「はい、若いコたちもどんどん強くなってくれるんで、『選手兼コーチ』として教えるときは教える、自分が練習するときは練習と、切り替えてやっています」
小池「3日も休むと体がなまってしまうの?」
吉田「そうですね、30歳を過ぎて余計にそれを感じるようになりましたし、疲れが取れにくくなる。いつでもどこでも寝られたのに、朝早く目が覚めたり……。はっ、年取ったなって……(苦笑)」
小池「早すぎますよ!いまからそんなこと言ってちゃダメ!!いまや『女性の人生90年』時代ですよ。どうするの、あと60年(笑)」
吉田「そうですね、90歳まで生きられたら最高かなと思いますね……。えっ、生涯現役?ハハッ」
幾多の試練やピンチを乗り越え“勝利”にこだわりつづけてきた2年。女の闘いの“勝敗を分けるもの”について最初に口を開いたのは、小池都知事だった。
小池「私は『エイヤ!』と崖から飛び降りた昨年の都知事選に続いて、“第2章”として都議選を控えています。都議会という古い議会を新しくするために“新しい血”を入れていくのが私の使命。現在(6月16日時点)、公認候補が48人ですが、35%は女性です。『社会を変えていくのは女性だ』という信念のもと“代表選手”たちそれぞれが頑張っている。今回は、私1人の闘いではなく団体戦です。みんなに頑張ってもらいことが、勝敗を分けることになります」
吉田「レスリングの代表合宿は、本当に何もない山の中で練習と陸上トレーニングだけを行います。9キロもある山登りコースは、延々と上りが続き、終盤で下ったかと思ったら最後にまた上りがある。鍛錬と同時に、苦しい練習を乗り越えてきた“チーム・ジャパン”の仲間としての団結力が高まっていく。その“仲間がいる”という思いも、勝利に向けてとても心強いものになるんです」
小池「チームという考え方は、非常に大事なことですね。もちろん、個々のポテンシャルの高さも重要ですけれど」
吉田「みんなにとって、それは嫌な練習なんですが、だからこそ足腰は鍛えられ、仲間と乗り越えることで忍耐力や精神力が強くなるんです」
小池「『都民ファーストの会』の女性候補者は、以前は政治や選挙に関わりのなかったような方が多い。でも、本当に、強い覚悟を持っている。『街頭演説は人生で2回目です』なんていう候補者も理路整然と話していて、聞いてくださっている聴衆のみなさんが感動して帰るんです。私なんか、最初の街頭演説ではガタガタ足が震えて支離滅裂なことを言っていました。中途半端に手を振っていたら、タクシーが止まった、なんてことも(笑)。覚悟がない“お手振り”だと、ダメですね」