最近、あるゲームが世界的に大きな旋風を巻き起こしています。スマートフォン向け無料ゲーム「ポケモンGO」です。7月7日に米国やオーストラリアなどでリリースされ、現地では爆発的な人気に。それを受け、近年低迷気味だった任天堂の株価は発売日の終値で15,000千円だったのに対し、7月12日時点で22,860円へと急上昇。1週間足らずで株式時価総額が9,300億円も増えたというのですから、その反響の大きさがうかがえます。
ポケモンGOは従来のゲームとは違い、スマートフォンのGPS機能を活用します。そのため画面の中だけで完結せず、プレーヤーは実際に屋外を歩きながらポケモンを探したり、捕まえたり、育成したり、交換したり、ほかのプレーヤーとバトルしたりします。具体的にはスマホを風景にかざすと、その画面上にポケモンが登場。そこにモンスターボールというものを投げると、ポケモンを捕まえることができるというものです。
ポケモンGOは、いわゆるARといわれる「拡張現実」を利用したソフトです。拡張現実とは「現実の世界に文字や音声や画像や動画といったデジタル情報を重ね合わせ、現実世界が拡張されたように見せる技術」のこと。ポケモンGOも現実で存在しているかのようにスマホ画面上にポケモンが現れ、画面上のモンスターボールをフリックすると捕まえることができる。そんなふうに“現実と仮想がごちゃまぜの状態”へと我々を導いていきます。現実と仮想の境界線が曖昧になっていくことで、これまで体験できなかった感覚を味わえる。想像の世界が存在しているように体験できるのが、このARという技術なのです。
いっぽう現実と仮想の融合がもたらす落とし穴もあります。仮想を現実として捉えることで、トラブルも相次いでいるのです。まずポケモンはスマホ画面上に現れるので、スマホ画面にくぎ付けとなって町中を歩き回る人が増えるようになっています。最近もいわゆる“歩きスマホ”が一種の社会問題になっていましたが、ポケモンGOはそれ以上の危険性を伴うとされ、交通安全上の問題が危惧されています。
たとえば先行発売されたアメリカでは早速さまざまなポケモンGO関連の事故が報告されています。前述したようにスマホ画面を見ながら町をさまよう人たちが続出するだけではなく、立入り禁止場所へと迷い込む人も。また川の近くでポケモン探しをしていた19歳女性が、ポケモンならぬ“死体”を発見して騒動になりました。さらにはゲームに熱中していた20代前半の男性2人がなんと、そのまま崖から転落して負傷してしまうなどの事態も話題になっています。
ただ、こうした危険性も指摘されてはいますが、ビジネスとしての展開可能性には極めて大きな期待がかかっているようです。たとえば現実の場所と連動できるため、世界中の観光名所や企業などとコラボできるといった具合です。その可能性は、まさに未知数といえるでしょう。