急に寒くなりました。皆さん体調はいかがでしょうか。風邪などひかないように暖かくお過ごしください。さて、韓国では大統領が弾劾されました。大統領側の腐敗に対する国民の怒りが、200万人を超えるろうそく集会という国民的運動に発展。大統領支持率は前代未聞の5%以下を記録するなど、大変な状況が続きました。そこで今回の弾劾決定です。韓国出身である私としては、複雑な心境でとても心が苦しいです。
そこで今回の背景を整理してみたいと思います。まず、大統領周辺を中心に様々な腐敗が起きていました。まだその全貌は明らかにされてはいませんが、国会の聴聞会を通じて、そしてこれからの検察の捜査などを通じて事実関係が徐々に明らかになっていくことでしょう。
大統領と親しい政権内外の複数の人物が結託し、そこに財閥など政治と経済の癒着による大規模な不祥事が長年にわたって蓋をされたままの状態にされてきた。その結果として、腐敗は益々深刻化してきたわけです。国民から選ばれなかった人が大統領以上の実権を握り、私利私欲のため国政を好きなようにしてきた。それは韓国国民全体に対する侮辱であり、決して許されてはいけないことです。大統領自身が直接的に関与したかどうかは、現在捜査中なので明言できません。しかし自分の友人による国政支配を容認したことについては、たとえ直接的な関与がなかったとしても重大な責任を感じなければなりません。
それにしても毎回韓国でこのようなことが起きる背景には、韓国の民主主義体制に根本的な問題があるからではないかと私は思います。それは民主主義の基本のキである三権分立が韓国ではしっかり機能していないという点です。三権分立というのは国会に代表される立法府、大統領府に代表される行政府、裁判所に代表される司法府が、過剰な権力乱用を防ぐため相互監視し合うこと。英語では、チェック&バランス・システムと言います。しかし韓国では公職の人事権や予算配分における大統領の権限が強すぎるあまり、度々立法府や司法府があたかも行政府の僕のようになる構図となりがちです。
人間というのは、権力を握ると行使したくなる生き物です。それが人間の本能であり、習性です。そうした人間の本能や習性から生まれる歪みを事前に防止するため、民主主義では三権分立体制を基本理念としてきたわけです。それが機能しなくなったら、その国の民主主義は危機に陥ることになる。今の韓国は、まさにそうした危機に直面しているのではないかと思います。
ただ幸いなことに、韓国の一般国民がこのような危機的状態を座視することなく一斉に立ち上がった。そして現政権の歪みを是正するため行動を起こした点は、韓国を民主主義の危機から救いあげたという意味で高く評価できるものだと思います。立法府や司法府が果たせなかった行政府への監視機能を、国民が果たしたのですから。とはいえ問題の多い大統領を選んだのは、他ならぬ韓国国民。その意味では、自省に基づく成熟が求められていることもまた事実です。
今回の弾劾決定は国会によるもので、道のりはまだまだ長いといえるでしょう。さらに、来年は次期大統領選挙も控えています。韓国は情が深い国だけに、これまで人情に左右される形で大統領を選ぶ傾向が強かった。だからこそ今回の一連の出来事が持つ意味を国民一人一人が咀嚼し、揺るぎのない真の民主主義を定着させなければなりません。そんな一票を、次の大統領選挙では心がけてほしいものです。