「人間のすべての愚かな行動は、恐怖心から生み出されるものなのです」
そう言ったのはローマの偉大なる哲人・セネカですが、和田アキ子さん(66)には今まさにこの言葉を捧げたい気持ちでいっぱいです。だってもう弱音を吐いちゃう和田アキ子さんって、なんだか違うんじゃないでしょうか。紅白に落選したくらいで海外に逃げたいだなんて、“強き女・和田アキ子”が言うセリフじゃない気がします。
そもそも、“和田アキ子”という存在は世代ごとに違いこそあれ、「ハキハキと言いたいことを言って、豪快で辛口で、ちょっと悪役的なポジションの芸能人」だと思われているはずです。ここ数年はマツコ・デラックスさん(44)や坂上忍さん(49)やヒロミさん(51)など、ハキハキと本音を言う“辛口毒舌キャラ”ブームが続いています。なのにアッコさんほどの人がなぜ、その波に乗れないのか。その理由がわかるでしょうか。
それは、アッコさんの毒には“スキ”がないのです。現代人は「わかる!ウケる!」という感覚でコミュニケーションを取っています。そこにあるのは共感力、そして瞬間的に理解出来る笑いです。そんな「わかりやすくウケる言葉」を基準にしたコミュニケーションは、毒舌を吐くときも当然必要。聞いている人をこの現代っ子向けの言葉で納得させられないと、それは芸能人の偉そうな上から目線コメントとして流されてしまうのです。
この微妙な空気の違いを理解し、豪快な辛口おっさんキャラで人気になっている同世代芸能人がいます。それはズバリ、梅沢富美男さん(66)。私も大好き! あの風貌が自分の父親にそっくりなんです……って、それは個人的な好みですが。梅沢さんがすごいのはアッコさんと同じく周りを気にせずズバズバ言いまくるのに、バラエティ番組などで年下にどんどん突っ込まれるという“スキと笑いの渦”を起こしている点です。
一見バカにされているようにも見えますが、存在自体がキョーレツな人は突っ込まれて少しバカにされるくらいがちょうどいい。そこでようやく「この人、面白い!」と親近感がわいてきます。これがアッコさんだった場合、ちょっと突っ込みを入れようものなら「何それ!?」と逆ギレしそうですよね。でもそれをしてしまった時点で「偉そうで怖いおばちゃん」となってしまうのです。
そんな怖いおばちゃんを貫くか、新生・和田アキ子に生まれ変わるかは自由です。しかし小林幸子さん(63)も「ラスボス感」というスキを作ってオタク受けし、みごと返り咲きました。そんな成功例を見ても、アッコさんがもう一回紅白であの鐘を鳴らすにはこれしかないでしょう。
最近は若者の心をつかもうとして、Twitterを始めたりスマホの使い方を覚えたりしているようです。でも、アッコさんにそんなもの必要ありません。ハワイに行って傷心を癒すよりも「紅白に出られなかったけど、まさに『笑って許して』だね!」とギャグ混じりに収める。それだけで大物・和田アキ子ここに健在、というものなのです。