人間は、広い世界のほんの一部で生きている。
全てを知ることはできない。
世界のどこかには、自分の知らない何かを熱狂的に愛してる人がいる。研究する人がいる。
そんな人が集まると、小さなブームになる。
誰かの世界を、少しだけ覗いてみちゃおう。
それが「うさこの覗いた世界」なのだ…!
ガチャポン――誰しも一度は夢中になったことがあるのではないだろうか。
お金をいれてレバーを回すとおもちゃが出てくるそれは1970年代に登場し、今なお街の各地にそっと設置されている。
病院の前やデパートで子どもたちが目ざとく目をつけては「1回だけやらせて!!」とお母さんを困らせるでおなじみのガチャポン。
スライムや謎の手錠、変わった形の消しゴムなど子どもの心にクリティカルヒットする景品が目白押しだった。
そんな子どもを虜にする魅惑のガチャポンだが、今ではどうやら子どもたちだけのものではないらしい。
現在のガチャポン事情を調査すべく、
東京・秋葉原にあるガチャポン専門店「ガチャポン会館」へ足を運んだ。
メイドさんに声をかけられながら秋葉原の電気街を闊歩した先に「ガチャポン会館」はある。
圧巻のガチャポン、ガチャポン、そしてガチャポン。
なんとその数約500台。
大人の身長以上の高さまで連なる。
店内にいるのはほぼ成人。驚くことに、女性が多い。
わたしは平日の昼間に訪れたが、財布片手のいかにも休憩中オーラ丸出しオフィスレディが「こんなの流行ってるらしいよ~」とキャッキャしていたのが象徴的だった。
大きな体のニッポン大好き外人さんも小さなガチャポンカプセルをいくつも握りしめ、レバーをカチャカチャ回している。
「ガチャポン」やオタク的な「秋葉原」からイメージするものとは大幅に違った世界がそこにはあったのだ。
変わりつつあるガチャポン界隈…。
その全貌が分かる最新ガチャポントレンドをご紹介します。
1. 癒されまくりのほっこり動物系
いつの時代も人の心を打ってやまない「どうぶつ」。
2016年の流行は「クレープやケーキなどのデザートに包む!」「仕事させたり休憩させたりしゃくれさせたり人間味を持たせる!」「ちょっとだけ技能を持たせる!」。
こちらはコケコッコーと鳴きながらくちばしを光らせるニワトリ。
本当にちょっとだけ技能がある。
種類も「名古屋コーチン」や「比内地鶏」「軍鶏」となんともおいしそうなラインナップだ。
(ニワトリのLEDライト/300円)
2. 王道!ゆるい人物フィギュア
ゆるい人物といえば、絶大の人気を誇るコップからぶらさがる「コップのフチに舞い降りた天使」こと『コップのフチ子』さん。
その人気ぶりたるや、出荷数はシリーズ累計で1,000万個を超えるらしい。
「ぽっちゃり人物系」も人気を博してきている。
ぽっちゃりバレリーナに、ぽっちゃりソルジャー。
社会の中でもぽっちゃりしてたらダメだと思われる職種の彼らがぽっちゃりしている図はなんとも愛らしい。
見てほっこりするゆるかわいさ。
これが人々を惹きつける理由である。
(コップのフチ子/200円・ぽっちゃりソルジャー2/200円・ポッチャリーナ/200円)
3. なんて精緻なんだ…!リアル再現系
絶滅危惧種の動物や、毒きのこ、恐竜など実際にお目にかかることはほぼないだろう生物たちが驚きのお手頃価格で楽しめる。
さらには、鳥獣戯画や仏像とリアルな歴史的芸術やマニア垂涎ものの名だたる戦闘機までがフィギュアに…!
机の上に置くだけで高尚になること間違いなしだ。
(日本の至宝 仏像立体図録1/400円)
4. 一体何に使うの…?食べ物ソックリ系
みかんにポテトチップス、おでんに和菓子。
かわいいものならいざ知らず、リアルなおでんなんか「これをどうするの…?」という気持ちでいっぱいにながこれが大人気らしい。
その中でも一番訳が分からなかった「牛ホルモンストラップ」をガチャ。
全6種のうち人生で唯一食べられなかった食べ物ハチノスが当たる。
これも何かの因果だと思ってカバンにつけます。
(牛ホルモンストラップ/200円)
5. 「場所」を小さくしちゃいました系
中華料理屋や取調室に校庭に半分埋まってるタイヤなど、場所や一部を切り取って小さくしたガチャポンも人気。
取調室を見てみると「事務椅子」はくるくる椅子が回転するし、
「折りたたみパイプ椅子」はなんと折りたたむことができるらしい。
なんて無駄な技術の集結っぷりだろう…。
普段見るものが掌スケールになると途端特別なものに見えてくるから不思議だ。
(誰得?! 俺得!! シリーズ 取調室/200円)
カプセルの中に詰まった日本の技術。
こんな手のひらサイズにも関わらず椅子は回転するし、服のしわや髪の毛の動きに至るまでこれほど精微に作れるなんて…。
職人と変態は紙一重だなと思わずにいられない。
なんといっても楽しいのはこの「ミニチュアならでは世界観」。
これだけ細かいにも関わらず、表情だけがちょっと粗いのがまた絶妙な「ゆる感」を醸し出すのだ。
また、このサイズを生かしたシチュエーションを作ってあげると「ゆる感」はさらに爆発する。
「自分の体の何倍もあるカツカレーに挑む阿修羅さま」
「デジタルについていけない阿修羅さま」
なんだこの阿修羅さまの愛おしさは…!
これだけリアルなのに、ミニチュアになるだけでなぜか「かわいい」。
そしてこのかわいさを介して、わたしたちが住む世界のサイズ感を変えて違った世界があることを教えてくれるのかもしれない。
財力がある大人がガチャポンに目覚めることほど恐ろしいことはないな…。
わたしは1時間以上500台を吟味し、時には両替で手のひらを100円玉でいっぱいにしながらガチャポンを楽しんだ。
この無駄な…もとい、素晴らしい日本の技術の詰まったカプセルで
卓上を華やかにしてみてはいかがだろうか?
きっとふとした瞬間このゆるかわいさに元気をもらえるはず。
「ガチャポン会館」東京都千代田区外神田3-15-5
営業時間:11:00~20:00(平日)11:00~22:00 (金・土・祭前日)