人間は、広い世界のほんの一部で生きている。
全てを知ることはできない。
世界のどこかには、自分の知らない何かを熱狂的に愛してる人がいる。研究する人がいる。
そんな人が集まると、小さなブームになる。
誰かの世界を、少しだけ覗いてみちゃおう。
それが「うさこの覗いた世界」なのだ…!
前回に引き続き今回も魅惑の香港ローカルフードをどどどんと紹介するぞ!
4. シメじゃない!? 鍋になっちゃったお粥
日本でお粥は「体調の悪いときに食べるもの」というイメージが強いかもしれないが、
アジア各国では違う。
国によっては朝ごはんとして、あるいは普通のごはんとして、
日常的に愛されている主食のうちのひとつだ。
お粥にいろんなものを乗せて味わう台湾式とも違い、いろんなものでお出汁を取る味わい深い香港式のお粥。
さらなる進化系が香港にはあると聞いて『新九記粥麵』を訪れた。
お粥でお肉や野菜をしゃぶしゃぶする「お粥鍋」である。
まるで「出汁も取れるし味わえるしちょうどいいよね?」と言わんばかりの合理性に満ちたお粥鍋。
具材はレタスのような葉っぱに、新鮮な牛肉、ごま油の香りが漂う豚肉のおだんごに、
骨のついた鶏肉、豪快なおさかな。
香港での牛肉は日本の薄くて脂身が多いそれとは違い、細切りで赤身が多い。
硬そうに見えるが、意外にやわらかくておいしいのだ。
お粥でしゃぶしゃぶすれば、何もつけなくてもしっかり味わいがある。
きっとお粥のとろみによって味わいが具材に密着してくれるんだろう…。
アクセントになるのは陳皮。陳皮とは漢方でもよく使われるオレンジの皮で、米とオレンジ奇跡のコラボによってお粥でも重くならずに爽やか。
お粥は水分を多く含むため、少ないお米の量でお腹いっぱいになれる利点もある。
なんて画期的な食べ物なんだろう…!
おいしくて食べ過ぎたら何の意味もないことは気付かないふりをして、
今宵もヘルシーな気分でいっぱいである。
5. またもお手軽ミシュラン!ガチョウにかぶりつけ!!
炎天下にも関わらずの大行列。
店員さんに何名かを告げると、手書きのナンバーがもらえるので
店の前で待機する。
ここは『甘牌焼鵝』、ミシュラン一つ星を受賞した香港ナンバー1と言われる有名ガチョウの丸焼き店だ。
15分ほど待ったころ(早いほう)、やっと呼ばれて席にありつける。
飲み物には香港式の何切れレモン入ってるねんレモンティーと鴛鴦茶(えんおうちゃ)。
鴛鴦茶はなぜかコーヒーと紅茶を合わせた香港オリジナルすぎる逸品だ。
「とんでもない味なんじゃ」と思いきや想像以上にしっくりくるせいで逆に混乱する。
なにが起きているのか分からない。コーヒーの苦みを紅茶の香りが打消し、非常に飲みやすくなっている。
もう紅茶派かコーヒー派かで喧嘩しなくていい。
世界ではこんなことも起きる。
そして主役がやってきた…。
ひとつは「子豚の皮ローストごはんのせ」。
塩の効いたぱりぱりした皮でごはんがおいしく食べられる。
そして大本命
ガチョウの丸焼き(半羽)だ。
これが…!!! 世界で数々の丸焼きを食べてきた丸焼きハンターのわたしから言わせてもらっても、
ナンバーワンといって過言ではないおいしさ…!
脂っこくはないが絶妙な脂のとろけ具合、引き締まった噛み締めるほどにおいしいお肉、全てがいい味わい。
そしてなんといってもお肉の旨み成分が溶け出たタレである。
これはごはん何杯もいけちゃうよ…!
食べ過ぎて危うくミシュランマンと同じ体型になりそうだったので、
最後はお持ち帰り(追加2香港ドル)させてもらった。
6. なぜか香港で国民食!!「出前一丁」の人気
香港で絶大な人気を誇る「出前一丁」。
なんだか聞き覚えのある名前…それもそのはず日本で昭和43年に発売された日清製品の出前一丁なのだ。
いつからか香港が本拠地かと疑うレベルで根付いている。
街を歩けばメインキャラクター「出前坊や」で装飾された食堂が。
インスタントラーメンをお店で提供することが一般的に行われる香港で出前一丁は人気のメニューだ。
朝、店内は老若男女で大盛況。日本では考えられない光景である。
出前一丁にとろとろのチーズソースやカレーソースをかける…なんていうオリジナル出前一丁を出す店もあるんだそうだ。
スーパーに行けば当たり前のように出前一丁コーナーがある。
その数、なんと平均10種類。
日本のスーパーには大体1種類しかない出前一丁がなぜ香港ではここまで…?
なぜこれほどまでに出前一丁は愛されるのか。
それを解明するべく…
買ってきました。
インスタントラーメンを食べること自体10年ぶりくらいのわたしは9種類検証する気満々だったのですが、
インスタントラーメン大好きな友人に「バカかお前インスタントラーメンは時間が命なんだぞ伸びたら終わりだろうが」と叱られ
3種類に絞りました。
<選抜メンバー>
日本風の東京醤油・とんこつ味、香港らしさ爆発の辛辣・XO醤海鮮味とピーナッツソース味に挑戦だ!
【東京醤油・とんこつ味】
タレを入れた瞬間、ぶわっ!!と広がるとんこつの香り。
ザ・日本のラーメン…といった香りだ。味も王道のにんにく香ばしい醤油とんこつラーメン。
例え香港製造であっても、その魂は変わらない。
「東京醤油」って言葉日本にはないけどね。
【辛辣・XO醤海鮮味】
ほのかに体を熱くさせる適度な辛さ!
辛いながらもまろやかなスープ。 エビをはじめとする、海鮮のおだしが香る。
海鮮の奥に潜むXO醤。層が深い!
香港らしさも楽しめるし、日本人にも受けがいいと思われるお土産にオススメの一品。
【ピーナッツソース味】
前回紹介したように、香港ではよくある「ピーナッツソース」を模したラーメン。
ピーナッツソースとラーメンという日本ではまず見ないコラボだ。
匂いは完全に香港夜市の香り。この香りを嗅いだところで決して「ラーメンだ」とは思わないだろう。
味もその通りのラーメン感のなさで、ネットで見ると日本人には大不評なようだ。
わたしはこのざらっとしたピーナッツと屋台臭、嫌いじゃない。
スープの色から味まで一個一個違ったたのしさを味わわせてくれる香港の「出前一丁」。
香港に訪れた際は逆輸入してみるのも一興だ!
いろんな土地に根付く地元の料理。
本当においしい店を誰より知っているのは地元の人だ。
だからわたしは地元の人が愛してやまないレストランに突撃する。
国内外問わず勇気を出して現地の人でにぎわう食堂に飛び込んで行ってみてほしい。
そこにはガイドブックに載っていないおいしいものが待っているかも?
お粥鍋「粥底火鍋」
新九記粥麵:灣仔大王東街9號地下
うますぎるガチョウの丸焼き「甘牌焼鵝」
甘牌焼鵝:灣仔軒尼詩道226號寶華商業中心地舖
出前一丁:大体どこのスーパーでも売ってる