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人間は、広い世界のほんの一部で生きている。
全てを知ることはできない。
世界のどこかには、自分の知らない何かを熱狂的に愛してる人がいる。研究する人がいる。
そんな人が集まると、小さなブームになる。
誰かの世界を、少しだけ覗いてみちゃおう。
それが「うさこの覗いた世界」なのだ…!

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一時ニュースで連日のようにその名を聞いた「3Dプリンター」。
拳銃をそっくりそのまま作り上げたり、自分の陰部を再現したり…と何かとニュースで聞く分には物騒なイメージがあったかもしれない。
だが、そもそも3Dプリンターと聞いて一体何者か即座にピンと来るだろうか?
わたしは驚くくらいピンと来なかった。
立体物がプリンターによって生成される…どうやって?
まるで魔法のようにぽわっと湧き出るイメージしか湧かない。
文系人生まっしぐらうさこの限界がそこにあった。
知りたくても、なかなかシロウトが手に入れられる値段のものではない。
そんなときで出会ったのが『FabCafe』だ。
なんと実際に3Dプリンターを使ってみることができるという。
現実世界の科学を解き明かしたいわたしはFabCafeへと向かった。

 

渋谷・道玄坂を登り切った場所にあるFabCafe。
いくつもの機械が置かれ、ハイテクモノつくりを体験することが出来る。
そのひとつが3Dプリンターだ。
「3Dアニマル」と呼ばれるプログラムでは、自分でキャラクターの設計図を作って
3Dにプリントすることができる。
まずはiPadを手渡され、専用アプリで設計図つくりに勤しむことになった。

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第一工程では基本の骨組みをひっぱったり、伸ばしたり、折り曲げたりして
オリジナルな形を作り上げていく。
360℃に回転させながら、基礎となる形を形成していくめちゃくちゃ難しい作業だ。

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そして次にズームしながら
削ったり、へこませたり、でっぱらせたりする第二工程が待っている。

はじめ「第一工程では体つきをつくって、第二工程で顔をつくろう」と思っていたが
想像以上に難しすぎて、まんまと怪物ができあがった。

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なんだこれ。頭がない…!
どうしてもうさこを作りたいわたしは、もう一度ゼロからやり直す。
次に、顔のざっくりした形をあらかじめ作っておき、
第二工程で削って耳を作ろう!と思ったが
それもどうやら違ったらしい。

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またしても軽くホラーな設計図が出来上がる。

 

いよいよわたしは基本軸でざっくり耳っぽいものの輪郭を作ってしまうことに決めた。
これまで理想を追い求めすぎたのだ。
楽しく創作するためには、時に思い切って理想を捨て去ることも必要だ。
3Dプリンターを使って出来る偶然の産物を、
めいっぱい楽しめばいいじゃないか。

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何だか楽しくなって、背中からふたつの翼を生やした。
それからお尻に着手する。
へこませるツールと、ふくらますツールがよいお尻を作ってくれそうだったからだ。
案の定なんとなくリアルな運動不足で垂れ下がって来てるっぽいお尻が出来てきた。

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できることを楽しむ。
これが、初心者の基本だ…!

1時間近くかけた設計図が完成すると、スタッフの方がしばらく作業をしたのち
3Dプリンターが動き始めた。

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PLA樹脂という植物由来のプラスチック素材が溶かされ、再構築されることによって
作り上げられていく仕組みだ。

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せわしなく動き続けるプリンター。

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光を浴びながら、積み上げられるようにして出来ていく。

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なんて神々しい…。

所要時間26:32…

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この世に一体の怪物が誕生した。
とても軽く、触った感じはプラスチックそのもの。
土台はパキパキ取ることができる。

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ちょっと肌がざらっぽいことから、素材が幾重にも重なってできたことがありありと分かりる。
世界でたったひとつのうさこアニマルだ。

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凹ませてあった目の部分を、油性ペンで塗ってみたところ
バケモノ化が激しく進んだ。

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フィラメントと油性ペンはどうやら相性が悪かったらしい。

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文系極まるわたしも、3Dプリンターを使って一体のうさこを生み出せてしまった。

 

3Dプリンターは様々な分野で活躍する機械である。
写真データやイラストを元にそっくりのフィギュアを作成する芸術面はさることながら、
釣り用具であるルアーを大量生産できたり、蝶番などの工具を作ったりもできる。
義手を作ったり、医者の手術練習用に臓器のレプリカを作ったり、
いくらでも使い方に希望が膨らむ文明の利器だ。
さらに発展してフィラメントではなく食材から食品をプリント(例えば小麦粉からパスタや砂糖からお菓子など)したり、
コンクリートから家をプリント…なんてことも可能になってきているらしい。

 

わたしは3Dプリンターの力を持て余しすぎて、恐らくその本来の10%も満足に使えていないけど
それと自分が関われたことと、少し理解できたことがうれしかった。
ニュースを見て「何のことやらさっぱりわからない」と悩んでいたことが、
「あ、多分こうやって作られるんだな…」と想像できるようになったことは大きい。
「知る」ということは、えてして楽しいことだ。
「どうせわたしには関係ない」と諦めないで探究すると
きっとそこには知られざる世界が待っている。

 

『FabCafe』
東京都渋谷区道玄坂1-22-7 道玄坂ピア1F
3D Animal(3Dプリンター体験)体験時間:60分/1個:2000円

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