何でもレンタルが出来る時代になった。
洋服、会議室、ブランド品……「ここぞ!」という時に助かるものがたくさんある中で、なんと鎧までレンタルすることが出来るらしい。
わたしは名古屋の「億萬石」で話を聞いた。
人間は、広い世界のほんの一部で生きている。
全てを知ることはできない。
世界のどこかには、自分の知らない何かを熱狂的に愛してる人がいる。研究する人がいる。
そんな人が集まると、小さなブームになる。
誰かの世界を、少しだけ覗いてみちゃおう。
それが「うさこの覗いた世界」なのだ……!
名古屋の大須を歩いていると、威勢のいい男性の声がする。
「よかったら寄って行ってください!」
真っ赤な看板に、入口の大きなドラ。「一億総億万長者」と夢に溢れすぎた貼り紙。
何の店か全く分からなかったがとりあえず入ってみることにした。
ここ「億萬石」は、いわく大須のパワースポットらしい。
「入口のドラを鳴らすと幸せになれる!」
「金・銀・銅でできた三鳥居をくぐると幸せになれる!」
「この鳥居に拝むといい!」とあちこちに促されるままあらゆる幸せを掴みに店内を駆け回った。
「甲冑、着てきますか?」と問われたので、そこも乗っておくことにする。
店内は多種多様の甲冑。
着用する過程で、その甲冑が想像しえないほど軽量であることに気付いた。
「この甲冑、実は段ボールで出来てるんですよ」
そこでわたしははじめて、謎のパワースポットのメインがこの甲冑であることを知る。
この「億萬石」をやっているのは、いろんなもののレンタルを行っている近藤産興。
甲冑は主にイベントやお祭りで1日15,000円からレンタルされている。
段ボール製のものだけでなく、アルミや強化プラスチックで出来たものなど用途に合わせて各種取り揃えがあるらしい。
名古屋のあたりでは歴史にちなんだお祭りも多く、マイ甲冑を持っている人も多い。
「甲冑教室」や「手づくりよろいの会」など、甲冑づくりも盛んだ。
もちろん時代ものの金属製やそのレプリカを持っている人もいるが、多くは段ボールや厚紙のように身近な素材を使って手軽に作られるようだ。
店内には鮮やかな現代風のものまである。
全身ピンクという女子力の高さに目を奪われるが、真っ赤な甲冑は真田幸村が実際に使っていた甲冑を模したもの。
450年前だって割とフリーダムだったんだなと思い知った。
着用した後、奥にある屏風の前で写真撮影をしてくれるサービス旺盛さ。
槍、刀なども無料で貸し出してくれるので手に持ちポーズを決めた。
「エイエイオー!」の掛け声でシャッターを切ってくれるという、何から何までパワフルなパワースポットである。
金ピカの屏風に真っ赤な床。視界がめでたい。
「何でまたこんなパワースポットを?」と伺うと、「大須を元気にしたい!」との答えが返ってきた。
ご利益のあるなしは置いておいても、店内に入るだけで元気になる感じがある。
一刻も早く一億円舞い込んでくるのを待ちたい。
日常では思いつかないあんなものまで、レンタルが出来る時代。
「ああ、こんなものがあれば」と思った時は諦めずに探してみれば、きっと欲しいものが見つかる。
「億萬石 福の神」
http://www.nandemo.jp/oku/
住所:愛知県名古屋市中区大須2丁目30-18
定休日:毎週水曜日
営業時間:11:00~18:00