深い緑の森の中に突然あらわれた落差36mの滝に感動
「三原山に登られるのなら、唐滝もぜひ行ってみてください。神秘的な雰囲気を味わえますから」――。八丈島でネイチャーガイドをしている知人がメールでこう伝えてきた。それは行くしかないだろう。
唐滝は三原山の中腹にある落差36.3mの滝。八丈島観光協会のHPにある「八丈島探検コース」に紹介されている。滞在2日目、三原山から下山後、車を止めておいたアシタバ畑近くの駐車場からのスタートだ。時刻は午後2時になっていた。
唐滝川沿いの細い林道のような遊歩道のような道をゆっくりと登っていく。せせらぎの音を聞きながら、のんびりハイキングだ。20分ほど進んだ所で、左手に「硫黄沼」への小径が分かれる。奥へ進んでいくと数分でエメラルドグリーンの池に着く。室町時代に造られたため池で、硫黄分が溶けて緑色になったそうだ。池の奥には小さな滝がある。最近降った雨のせいだろうか勢いよく水が流れ落ちている。池と滝と背後の山。なかなか絵になる光景である。
遊歩道に戻り、唐滝方面に向かう。途中、土砂崩れの跡なのだろう。ガードレールが崩れ、ロープが張られている。道幅が狭くなり、石が多く歩きにくい。15分ほど行くと、コンクリート製の水道タンクの所に出る。ここを左側に回り込んで進むと、渓流沿いの自然道になる。渓流歩きの雰囲気になってきた。ヘゴ(木生シダ)が茂るせせらぎを渡り、堰堤を超え、幅50センチほどの細い道を登っていく。
岩肌を清冽な水のシャワーが降り注ぎ、風に飛沫が散る
しばらく渓流沿いのハイクを楽しんでいると、激しい水音が聞こえ、樹木の間に突然、細長い滝があらわれた。唐滝だ。清冽な水が岩肌にあたり、「ザー、ザー、ザーッ」という音が響き渡る。飛沫が当たった岩壁には鮮やかなグリーンの苔が生え、彩りを添えている。滝壺はなく、飛沫は下のいくつもの岩を直撃して美しい白い筋をつくり、その先に小さな淵ができている。
小径の岩に腰かけ、天然のシャワーを飽きることなく眺め続ける。渓流の森の中にあらわれた清らかな滝が奏でる自然の音楽に耳を傾け、一幅の絵画に見とれる。マイナスイオンを一身に浴び、心穏やかなひとときを過ごす。八丈で会った人は「とてもスピリチュアルな場所」という表現していた。たしかに、いつまでもここにいたい。離れたくない気分になる。太古の時代から森の精、水の精がいるんじゃないか。そんな思いに駆られてくる。
晴れた日の午後に訪れると、滝に虹がかかり、それは見事な光景だという。あいにく雲が出てきてしまい、虹にはお目にかかれなかったが、貴重な体験ができ、十分満足だ。
所要時間:往復約2時間
問い合わせ:八丈島観光協会 04996-2-1377
【ビュースポット】大海原に沈む夕日を眺める
アップダウンの多い八丈島の移動はレンタカーが便利。今回利用したのはフリーダムレンタカー(8jo-freedom.com)空港までの配車、空港での乗り捨てが可能なうえ、ネット予約だと最大30%割引がある(期間は要確認)。島内は狭い道が多く、ガソリン代も高いので軽自動車がオススメだ。
面積69平方キロ、周囲59キロの八丈島は、車で2時間もあれば一周できるがアップダウンやカーブが多いので運転は慎重に。絶景スポットはたくさん!
八丈富士の山腹にある八丈富士牧野・ふれあい牧場は、牛が放し飼いにされている。展望台からは空港や三原山が一望でき、アイスクリームも人気。
八丈富士の噴火によりできた溶岩の台地南原千畳敷は、目の前に八丈小島が。
大海原に落ちる夕日を眺める絶好のスポット。大坂展望台は「八丈八景」の一つに選ばれている名所で、八丈富士、八丈小島・太平洋を一望。歴史の一端に触れるなら陣屋跡。周囲に続く玉石垣は、島の中でもっとも古く、その美しさは秀逸。その昔、流人たちが海岸から運んだ玉石で造られているという。
ANA 山ガールの八丈自慢
八丈島空港ターミナルビル株式会社
受託業務課
菅原 幸夏(ゆか)さん
島のみなさんが大事にされている空港です
八丈島空港はANAが羽田―八丈島間を一日3便(往復)運航しているほか、東邦航空のヘリが青ヶ島と御蔵島にそれぞれ1便就航している。
「正面に八丈富士がそびえるロケ―ション最高です。展望デッキからぜひ眺めていただきたいですね。空港の職員は所長以下旅客係員15人で、本当にアットホームな雰囲気。苗字が同じ方がいることもあり、お互い名前で呼び合うことが多いですね。お客様との距離も近く、あいさつだけでなくちょっとした会話を交わすこともあります。今回、クリスマスにあわせてツリーを自分たちでつくりました。ストレチア、月桃など島特産の花を飾り、トナカイの代わりに植物公園に飼われているキョンを配置しました。大きなポインセチアは都立八丈高校園芸課の生徒さんが育てたものです。島のみなさんが心から大事にされている空港だと感じています」(取材時期は12月上旬)。
オススメのお土産は?
「島の特産がいっぱいあり、お薦めのお土産を絞りきれないのですが、最近お気に入りなのは、島内産のフルーツを使ったジャムジェラートです。“西の魔女のシトラスジャムジェラ”“東の魔女のハイビスカスジャムジェラ”といったネーミングもユニークです。まずは島のジャージー牛乳で作ったミルクジェラートを味わっていただき、その後に、カップの底に詰め込まれたジャムを混ぜながらお召し上がりいただくと、八丈の味をダブルで楽しめるようになっています。飲むヨーグルトもおいしいですよ」
ジャムジェラートは通販でも購入できる。
(詳しくは、https://hachijo-golden-milk.stores.jp/ を参照)
八丈島シリーズはこれで終了。今回は紹介できませんでしたが、ダイビングや釣りのスポットもいっぱい。羽田からわずか50分。魅惑のアイランドへぜひどうぞ!!