「もともと自民・公明・民主の3党合意で決まった消費税増税です。しかし消費税を上げたことで経済が悪化しているいま、臨機応変な対応をすべきなんです。8%据え置きなんて生ぬるいんです」
本誌記者にそう明言したのは、民主党で筆頭副幹事長を務める馬淵澄夫議員(55)。民主党政権時には国土交通相も務めた馬淵議員は、民主党内での政策決定において今なお大きな影響力を持つ。来年4月に10%に引き上げられる消費税。しかし馬淵議員は今月1日、自身のブログでこれに待ったをかけ、「消費増税を5%に戻します!」という政策をぶち上げた。
《(前略)景気回復のために2年間の特例措置で5%へ引き下げる》
《いち早く、民主党が、(消費税増税の)凍結のみならず引き下げまで検討、言及すべきだ》
このままの消費増税に異を唱える声は、政府内からもあがっている。2月26日、菅義偉官房長官(67)は記者会見で「税率を上げても税収が上がらないようでは、消費税をあげることはあり得ない」と述べた。増税によって買い控えが起きれば、結局税収が上がらない。そう見込まれるのなら、消費増税はしない、と言及したのだ。経済の成長を表す日本のGDP(国内総生産)の成長率は、昨年10月~12月期で減少している。
しかし今月3日に行われた参院予算委員会で、安倍晋三首相(61)は「リーマン・ショック、震災ほどの事態にならないかぎり消費税は予定どおり引き上げる」と言明。その発言に対して、「いま、まさにそういう事態が起ころうとしているんです!」と警告するのは経済アナリストの森永卓郎さんだ。
「このままGDP成長率が落ちていけば、’08年のリーマン・ショック以来の“2年連続の経済悪化”になるんです。増税を行えば、3年、4年とGDPマイナスが続いていく。日本経済を救うためにも、消費税は5%に下げてしかるべきでしょう」
消費税率がさがることは、一見消費者にとってはうれしいこと。だが今月、自民党は消費増税を前提として軽減税率の導入を盛り込んだ予算案を、衆院で通過させたばかり。増税を取りやめれば、これまでの軽減税率の議論は全くのムダになる。10%への増税法案の可決をしながら、水面下で増税取りやめに動いているのだとすれば、これまでの国会審議そのものが“茶番劇”だったということだ。政治評論家の有馬晴海さんは、こう語る。
「これらの消費税増税への反対政策は、 選挙で票を集めるための党利党略。安倍首相は何が何でも自分の手で憲法改正をしたい。そのために、夏の参院選で議決に必要な3分の2以上の議席を参院選で獲得したい。そこから“増税をやめる”というシナリオも生まれているんです」
また菅官房長官の“増税凍結”発言の裏には、安倍首相の巧妙な打算が見え隠れするとも有馬さんは続ける。
「日本の増税による財政再建はいわば国際公約。増税の取りやめは、国際的な信用を失うことになりまねません。ですから、安倍さんは増税の取りやめを自分からは決して言い出さないのです。菅官房長官に増税延期をにおわせるような発言をさせて、有権者の様子を見ているのでしょう。国民のためではなく、首相は自身の野望を達成するために“増税延期”を引き合いに出しているんです」
改憲のため、そして議席獲得のための増税凍結だとすれば、国民生活を考えての決断ではないに等しい。馬淵議員は減税実現に関して、本誌にこう答えた。
「国民の危機的状況を救うためにも、実現させるべきです。責任を持って、粘り強く訴えていきたいと思います」
本当に国民のための減税ならば大歓迎なのだが……。