在任期間中に何が何でも!ーーという安倍総理の鼻息が聞こえてきそうな憲法改正議論。とくにそのターゲットとなっているのが“9条”だが、何がそんなに問題なのか。きちんと理解しておこう!
「自民党が掲げている『日本国憲法改正草案』は野党だった’12年に“ヒマで、勢いでつくっちゃった”くらいのものだと思っていたのです。ただ、『憲法改正したい』と表明している首相が総裁を務める党の、現在唯一の『改憲案』ですので、内容は把握・吟味しておくべきですね」
こう話すのは、大阪国際大学准教授で、フェイスブック上のグループ・全日本おばちゃん党代表代行の谷口真由美さん。最新刊にピーコさん、佐高信さんとの共著『お笑い自民党改憲案』(金曜日刊)がある。あきれながらも、警戒心を持って谷口さんが解説してくれたのは、その改憲草案9条だ。
「現行憲法と比べてみてください。まず章のタイトルで、いちばん根幹となる『誓い』が削除されて言い換えられているんです……」
言われてみて、ビックリ!現行憲法の9条は「第2章 戦争の放棄」として始まるのだが、改憲案ではそれがなんと削除され、「安全保障(平和主義)」と上書きされているのだ!そしてまず、1項では−−。
「現行憲法では『武力の行使は……永久にこれを放棄する』と誓っているはずなのに、これが『……用いない』に換えられている。『使わないけれど、放棄はしないよ』という意思でしょうね。そして2項で現行憲法が『……戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない』と重ねて誓っているものが、改憲案では全面的に書き換えられ『前項の規定は、自衛権の発動を妨げるものではない』としている。これまで条文を変えずに“解釈”で『合憲』としてきた自衛隊や自衛権を、明文化しようとしているわけです」
さらに驚愕なのが、改憲案で新設されている9条の2。「国防軍」という言葉が突如として登場している!
「『自衛隊』を明記するどころか、『国防軍を保持する』と、かなり飛躍しています。続く5項で『国防軍に審判所を置く』とあるのは、いわゆる『軍事裁判所』の性質を持つものでしょう。いまの自衛隊にはそれがなく、国際法上は『軍隊』とみなされないことから、明記したいのでしょうね」
そして谷口さんが、「私たち国民に直接関わってくる」と警鐘を鳴らすのが、次の「9条の3」の記述。
「ここには『国は主権と独立を守るため、国民と協力して、領土、領海及び領空を保全し、その資源を確保しなければならない』とあります。まず『領土、領海』や『資源』とは、尖閣諸島や天然ガスなどを意識しているのかと思います。そしてそれを『国民と協力して……確保しなければならない』というのが、彼らが言いたいことでしょう。これは『徴兵制』を彷彿とさせる性質のものです……」
谷口さんが眉間にしわを寄せながら続ける。
「解釈改憲などで『もはや有名無実化しているじゃないか』と言われたりもしますが、私は“9条があること”=“仮面夫婦のような状態”と考えています。ここでいう仮面夫婦は、『法律婚』という契約に意味があると考えて、それをなんとか維持している状態。それと似たようなもので、9条にもいろいろあるけれど、なんとか変えずに続けていることが、『恒久の平和』を維持することに、つながっているともいえませんか」
秘密保護法、集団的自衛権、共謀罪……日本が「軍隊を持つ国家」になるために、いまは周りを着々と固められてきている状態か……。
「そんな権力の暴走時代にはもう、いまの『憲法』しか、歯止めにならへんのです」