NHK杯のショートとフリーでともに世界最高点を記録し、史上初となる300点超えで優勝した羽生結弦(20)。今回のSPで、羽生はカナダ大会の演技構成を変更。4回転ジャンプを2回入れるという最高難度のプログラムに挑戦したことが功を奏した。そこには、彼の“強い意志”があったという。
「カナダ大会後、練習拠点のトロントのリンクでは羽生選手とオーサー・コーチが夜遅くまで話し込む姿がたびたび目撃されていました。NHK杯に向けて『もっと難度を上げたい』と羽生が直談判していたようです。それに対して、オーサー氏は『GPファイナル出場のためにもNHK杯ではまず結果を出すことが重要。だからいまは安全策を選ぶべきだ!』と説得。しかし彼は頑として聞く耳を持たず、SPで4回転を2回跳ぶことを半ば強引に決めたそうです」(フィギュア関係者)
そんな“反逆の挑戦”の背景には、GPファイナル出場を一番乗りで決めた“新星”宇野昌磨(17)の存在が大きかったようだ。
「今季シニアデビューしたばかりの宇野選手のことを、羽生選手はジュニア時代から弟のように可愛がっていました。そんな弟分が驚くほどの急成長ぶりを見せたことで、『絶対に負けない!』と闘志に火がついたようです」(前出・フィギュア関係者)
五輪金メダリストとして、安全策に逃げることはプライドが許さなかったのだろう。だが、それ以上に羽生のなかにはある思いが芽生えていたという。
「大会前、羽生選手はお母さんに髪を切ってもらったそうです。彼のヘアカットはいつもお母さんの役目。それが唯一のホッとできる瞬間で、そこでいろんなことを語るそうです。彼は言っていました。『本当の勝負は来春の世界選手権。でもだからこそ、ここで弱気になったらその目標は達成できない気がするんだ』と。最高難度への挑戦は、恐怖から逃げないという“自分との勝負”でもあったようです」(別のフィギュア関係者)
後輩の躍進は、羽生をさらなる高みへと押し上げたようだ――。