米ツアー2勝めで、世界ランクも自己最高の12位に浮上−−。だが、「目標はメジャー制覇」と公言する松山英樹(23歳)にとって、勝利の余韻に浸っている暇はない。
「観客の9割強が、地元の人気選手ファウラーを応援するアウェー状況。そのなかで勝ち切ったタフさは評価できる。同時に、今季の彼はひと回り大きくなり、米国で戦う肉体も手に入れたようだ」(現地記者)
じつは、松山は3年前から己れの体を苛め抜いている。きっかけは、あるトレーナーのひと言。「日本のプロ野球選手と米ツアーの選手の筋力は同等。しかし日本のゴルファーは、そこからはるかに下」。それが悔しくて肉体改造を決意。現在、大阪でトレーニングを指導する「B2ファクトリー」秀島正芳ヘッドトレーナー(33歳)が語る。
「うちには年に3、4回来て、1回で5日間ほど集中的にトレーニングします。大事なのは、上半身よりも下半身を鍛えること。上半身の3倍は鍛えています。下に圧倒的な筋力がなければ、自分の体重をうまく扱うことができない。特に彼の場合、お尻の筋力が生命線。その筋力があれば、ゴルフが崩れることはまずない」
単純に3倍といっても、半端な量ではない。ジャンプをからめた器具やダンベルを使ったオリジナルメニューは15種類にも及ぶ。それが終われば、即、4種目の上半身と下半身を連動させるトレーニングに移り、最後に補強トレーニングをおこなう。休憩は給水の時ぐらい。
「すべてをこなす時間は1時間30分ほど。考える間もなく、次々とメニューを課す。短時間でハードなだけに、酸欠や吐きそうになることもしょっちゅうです。実際、彼も吐いたことがある。最初はすべてのメニューをこなせなかった。それでもやる。強くなりたい一心でやっていました」
一流選手でも音を上げてしまうトレーニングの量と質。当初は、全身筋肉痛のため、宿舎に帰るのもひと苦労だったという。
「続けることで下半身の大きさ、強さは当初に比べ変わってきた。ほかの選手より秀でているのは、粘りとバランス。粘りとはバランスを崩したときに耐えられる強さ。日本のプロゴルファーで、これだけ粘り強い下半身を持った選手はいない。だから、スイング時に軸がブレても、瞬時に正しい軸に戻すことができる。渡米後も、(同ジム所属の)飯田光輝専属トレーナーのもと、ほぼ毎日トレーニングは続けています」
(FLASH 2016年3月1日号)