(写真・AFLO)
アメリカ・ボストンの世界選手権で、2位に終わった羽生結弦選手(21)。初日の公式練習ではデニス・テン選手(22)に進路を妨害され、「それはねえだろ、お前!」と声を荒らげる騒動が勃発。連盟関係者も「あんなに怒った姿は見たことがない」と驚くほどだった。
「公式練習の際はたくさんの選手がリンクを使うことになりますが、自分の曲が流れている選手の演技を優先させる“暗黙のルール”があります。このときは、羽生選手の曲が流れていました。前日にも同じように接触しそうな場面があったそうで、こうした度重なる演技妨害に、さすがの羽生選手も堪忍袋の緒が切れたのでしょう」(スポーツ紙記者)
羽生自身も「精神状態はぐちゃぐちゃだった」と振り返るほど取り乱していたが、ショートプログラムでは会心の演技でトップに。演技直後には「よっしゃー、見たかー!」と雄叫びをあげていた。だが結局フリーではミスが目立ち、逃げ切ることができなかった。
「近ごろの羽生選手には、鬼気迫るものがあります。五輪で金メダルを獲得して以降、彼は自らに絶対王者だと言い聞かせてきました。彼はことあるごとに『僕は五輪チャンピオンなんだから、いつも演技でファンに喜んでもらう義務がある』と語り、今大会直前も深夜3時まで練習する姿が目撃されていたそうです」(前出・フィギュア関係者)
だがそんな羽生に対し、ブライアン・オーサーコーチ(54)が警鐘を鳴らしていたのだ。
「オーサー氏は『今回の世界選手権は、あくまで通過点。目指すのは、2年後の平昌五輪だ。このままの緊張状態でピークを保ち続けることなんて、できるはずもない。だから今はもっとリラックスしてスケートを楽しんでほしい。真面目すぎるのはよくない』と訴えたそうです。それでも羽生選手は一度言い出したら聞かない。そのため“ジャンプは一日50本まで”という、異例の制限まで出したといいます」(前出・フィギュア関係者)
このままではユヅが壊れてしまう。心配が的中したかのように今大会で辛酸をなめる結果となった羽生。激怒の背景には、緊張状態が限界だったこともあったのかもしれない。
「彼はいつも“いま以上”を求めます。それは選手にとってはいいことです。しかし彼はフィギュアに対して真面目すぎるあまり、その気持ちが人一倍強い。そのため得点を伸ばせば伸ばすほど、自分の首を絞める結果となっているのです。彼の技術ポイントはすでに最高レベルにまで達しています。だとすれば、さらに成長するためには感情面での安定や表現を豊かにしていくしかありません。そういう意味でも肩の力を抜くことが大切なのだとオーサー氏は訴え続けているのです」(前出・スポーツ紙記者)
前人未踏の域に達した羽生だけにしかわからない、孤独な苦悩。3日にはテン選手と和解したことを明かし「彼自身苦しさもあっただろうし、僕にもあった」と語っている。
「今大会でシーズンを終え、束の間のオフをむかえます。彼はこの時期になると、家族を連れて旅行に出かけていました。昨年のオフは家族で九州へ出かけ、英気を養っていたそうです。今回、羽生選手は『どこか暖かいところに行ってみたい』と周囲に漏らしていたそうです。そこで、リフレッシュしてくれるといいですが……」(地元のフィギュア関係者)
平昌五輪までまだ2年。しばらく家族旅行を楽しむことで疲れ切った心身を癒し、さらに一皮むけた王者の風格を見せつけてほしい。