「子どもたちには学習机を与えていません。代わりに縦2メートルを超えるダイニングテーブルがわが家の真ん中に鎮座しています。子ども3人分の学習机を並べるスペースがなかったということもありますが、東大卒の夫が自分の部屋はもちろん、学習机すら持たずに育ったという理由がいちばん大きい。学習環境はモノではなく、周りの協力と本人の自主性が整えるものだと感じていました」
そう語るのは“東大4世代”家族の母・瀧川美鈴さん(52)。夫の祖父、夫の父、夫と東大卒が3代にわたって続く家系に嫁ぎ、昨年、次女が東大に入学し、理系に進んだリケジョだ。
瀧川さんは夫や義母から聞いた子育てエピソードに加え、自らの子育て論を展開する。それはどれも目からウロコのカンタンなもの。「ウチの家系にはそんな優秀な遺伝子ないわぁ」なんて思うなかれ。意外にもリケジョは、オープンな環境によって育つものなのです!我が子をリケジョにするその方法とは?瀧川さんが教えてくれた。
【塾よりも絵画教室に!】
「絵を描かせるということは、勉強に必要な3つの基礎“集中力”“観察力”“根気”が育つと教えてもらいました。義母の父は“知識はお金よりも価値がある”という考えで、その子育て論は私の子育てにも大きく影響しました」
絵のデッサンや豊かな感性から、リケジョに必要な基礎を磨くことができるそうだ。
【なにごとも自分で決定させる!】
「娘が理系を選んだとき、私は何も言いませんでした。これまでも子どもに決定権を持たせていましたから。お稽古事を始めるなら3年間以上続ける約束をさせました。途中でやめてもいいけど、やめたら二度とできないと思いなさいと、決定することの大切さも考えさせました」
子どものころから自分で意思決定のできる子に育てることで、やりたいことをやり抜く力が身に付く。
【家事をさせる!】
「ケーキを作るには材料を量り、卵を泡立てます。卵は攪拌したら大きくなるとか、熱を加えると膨らむとか、子どもは自然と学ぶわけです。長女は中学の理科の実験でケーキ作りを思い出したそうですよ」
ビーカーや試験管が包丁や鍋に替わるだけで料理も立派なサイエンス!
【自然のなかで遊ばせる!】
「子ども時代にしかできないことをさせる。夕日ってこんな色をしていたとか、砂場で遊んでいるときに見たミミズの動きとか、海で泳ぐ魚の様子とか、学問を積み上げる最中に引き出しがたくさんあるほど考える力になるはずです」
自然の複雑さや生き物に触れ、生命の不思議さなどを実感させる。
【子どもが拾うまで機会を与え続ける!】
「親はあくまでも機会を与えるのみ。拾うのは子どもだから。親は子どもの前に“機会”をぼたぼた落としていけばいい。落とすものは単語帳や参考書だけじゃなくて、絵画を見る機会やお芝居を鑑賞するような広い範囲から。しかも本物を。興味を持てば自分で調べて、深く追究するはずですから」
子どもに何がハマるかわからないと、瀧川さんはジャンルを問わず美術館、科学博物館、水族館など、何でも連れ回したそう。
【子どもの好きなことに理解を示す!】
「娘は1年浪人したのですが、周囲から『よく娘さんを浪人させましたねえ』『結婚相手を見つけるのが大変そうですね』なんて言われたことも」
特に女子の進路は親の意見や意思に左右されがち。だが、女性は文系向きで理系には向いていないと親が固定観念を持っていたら、子どもの興味を摘み取ってしまうことになる。
「まだまだ世の中の固定観念があると感じています。娘が理系を選択したときも、浪人を決めたときも、私は気にしませんでした。実際に勉強して夢をかなえるのは子ども自身の力ですから。親はそれを全力でサポートすればいいのです」