6月10日、安倍首相が「混合診療」の拡大を発表した。混合診療とは、公的保険が使える保険診療と保険外の診療を併用すること。日本では、治療の中で保険外の治療をひとつでも行うと、保険がきく検査や入院費もすべて保険がきかなくなり、全部自己負担になっていたが……。この「混合診療」の拡大とはどういうことか、経済ジャーナリストの荻原博子さんに聞いた。

 

「安倍首相の言う混合診療とは、患者から希望があった保険外診療について、混合診療として認めていい医療かどうかの審査を行い、審査結果を早く出すこと。加えて、混合診療が可能な病院を増やすことです。そうすることで、先進医療を受けられる人や機会が増えれば、患者にとってメリットとなるでしょう」

 

混合診療が広がったら、医療費はどうなるのか?

 

「たとえばがんの治療中に検査や薬、入院費などに50万円かかり、保険外の新薬を30万円使ったとします。この新薬が国の認めた先進医療に含まれない場合、ほかの検査などもすべて保険外になります。全額自己負担で80万円必要です。いっぽう、混合診療と認められると、検査などの50万円には保険がきき、3割負担なら15万円。新薬の分と合わせて45万円です」

 

混合診療が広がると、保険外の診療を含んだ医療が、今よりは安い治療費で受けられる。日本では未認可でも、海外では実績のある新薬などを使いたい人には、負担軽減になる朗報だという。しかし、デメリットも……。

 

「本来先進医療は、安全性や有効性を確認できたものから、保険診療に切り替えるよう認可を行います。今は国の認可を待っている方がたくさんいますが、混合診療が拡大すれば、認可がなくても使う人が増えるでしょう。その結果、先進医療などの認可が進まなくなることも考えられます。さらに、裕福な人は診療を受けられ、貧しい人は受けられないといった格差が生じることが心配されます」

 

混合診療は、先進医療が保険適応されるまでのつなぎ的な施策であるべき、と荻原さん。

 

「政府は、混合診療拡大の法案を来年の国会に提出し、’16年にも導入したいと考えているようです。今後の審議などを注意深く見守っていきましょう」

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