本誌は、昭和歌謡について女性300人にアンケートを実施。その結果を音楽評論家・富澤一誠さん(63)と見ながら、昭和歌謡が時代とともに移ろう姿を振り返ってみた。
「1位が久保田早紀の『異邦人』(’80年)。これは意外ですね。普通、この手のアンケートでは『なごり雪』『22才の別れ』『神田川』が御三家で、このどれかが1位のことが多い」(富澤さん・以下同)
じつは、本誌アンケートは36歳からが対象。一般的な「昭和歌謡」世代より若い世代の票が加わったことが、『異邦人』がトップになった一因かもしれない。
2位はイルカの『なごり雪』(’76年)。
「’72年に吉田拓郎がメジャーデビューし、ニューミュージック(以下NM)が演歌・歌謡曲の対抗として台頭してきた時代の代表作。’70年安保が終わり、世情が個人に急速にシフトしていくときでした。かぐや姫関連の名作『神田川』(41位)『22才の別れ』(6位)とともに、当時の若者のせつなさをみごとに表現しています」
3位はオフコースの『さよなら』(’80年)。「曲調は違うものの、『異邦人』と並ぶNMの代表。自分の失恋経験と重ねた人も多いはず」。実際「高校時代、好きだった人と別れたときにはやってました。当時は、フォークからNMに主流が変わって、さわやかに悲しい曲を歌い上げるようなものが、多かったと思います」(50歳・専業主婦)と、当時のほろ苦い思い出を振り返る意見も。
4位はプリンセス プリンセスの『Diamonds』(’89年)。「等身大の女性の歌を女性ロックバンドが作り、歌い、演奏する。まさにバンドブームの代表曲のひとつです」。
5位は松任谷由実の『守ってあげたい』(’81年)。「ユーミンはそれまでのフォークの分野に、ファッショナブルな歌詞とサウンドを持ち込み、NMという呼称を確立した歌姫。同世代の女性の支持が高いはずです」。アンケートにも「ユーミンが大好き」「ユーミンは私の青春」という意見が、驚くほど多く寄せられた。
昭和歌謡の魅力を富澤さんはこう語る。
「シングルレコードは、物理的に3分前後しか録音できなかったため、削りに削って短時間にすべてを凝縮したよさが、当時の曲にはあります。また、メロディ1音に歌詞1文字の原則が生きていて、素人でも歌いやすい。それが人々の個々の思い出と相まって、今も胸を打つものになっているんだと思いますね」