「年金減少」時代に向けて、生涯現役で働き続ける究極の形といえば、自分で会社を作る=起業してしまうこと。じつは最近、女性ならではのスキルを生かした起業が相次いでいるという。
「アベノミクスの成長戦略のひとつに、女性の社会進出があります。そのせいか最近、『起業したい』という女性からの、意欲的な相談が寄せられるようになりました」
そう語るのは、起業支援会社「銀座セカンドライフ」(東京都中央区)の片桐実央代表取締役。同社は’08年に創業し、都内などでレンタルオフィスを運営している。起業を目指す会員に、会社設立の申請方法や、顧客の見つけ方などをサポートしている。
筆跡鑑定やカウンセリング、企業向けセミナーなどを行う会社「Useful(ユースフル)」の代表取締役・母士真早希(もじまさき)さん(50)も、片桐さんの助言で’13年、株式会社を設立した。
「筆跡診断士の資格を習得したのが’01年。そのときは、主婦をしながらの片手間で習っていました。それが。後に離婚して、食べ盛りの子供3人を養わなければならなくなり、そのときに、この資格を生かそうと思いました」
’06年から仕事をスタート。在宅で仕事ができるよう、自宅に送られてきた「ハガキ」で、筆跡を診断していた。その後、子育てに手がかからなくなったことで、企業に送られてくる履歴書の筆跡を診断し、適切な部署へ配属させるといった、企業の採用のためのアドバイスを行うように。さらに、事業が拡大するにつれ、スクールや講演会などへの参加や、メディア出演も続いた。
「筆跡診断だけでなく、心理学も同時に学べるようなカリキュラムを組み、セミナーを終了することで、筆跡鑑定士になれる一般社団法人も立ち上げました」
そう語る母士さんが資格を事業に結びつけられたのは、片桐さんのアドバイスがあったから。片桐さんによれば、女性が起業で成功するポイントはいくつかある。
まずは、お稽古事などで、得意な分野を生かすケース。趣味が高じてアロマセラピーの資格を取得したり、お菓子作りが好きなあまり、自宅のキッチンを教室やサロンにしたり……。母士さんもこれに当てはまる。
そして、子育てや家事といった、経験を生かした仕事を始めるケース。育児に悩む若いママを対象に、カウンセリングやセミナーを開催する。あるいは、家事代行サービスや、保育所を始める人もいるという。
「同じ女性として、困っている人の立場がよく理解できるからこそ、顧客が本当に求めるサービスは何かがわかり、提供できるといったメリットがあります」(母士さん)
起業を成功させるためには、まずいきなり会社を起こすのではなく、少しづつ実績を積み重ねて、事業を拡大していくのが重要だそうだ。