「初任給をもらったばかりのお子さんに『老後の蓄えをしておきなさい』といっても、ピンとこないでしょう。ですから、ためることのメリットを前面に出して運用を勧めてあげることです」

 

そう提案するのは、ファイナンシャル・プランナーの北見久美子さん。新社会人が町をにぎわすシーズン。しかし安心な老後を過ごすための準備は、すぐ始めなければいけない。それには預貯金も重要だが、その何割かを投資に回さなければ、この低金利ではおカネを増やすことはできないそう。

 

そこでこの春、フレッシュマンとなったわが子が道を踏み誤らないよう、おカネに関する知識を身につけさせ、老後の蓄えを準備させる方法を、北見さんに聞いた。

 

「何より、最初の習慣づけが肝心です。人間の心理として、ある程度、強制的なやり方でなければ、毎月の運用を続けることはできません」

 

鉄則は、一度、手続きしてしまえば、あとは60歳まで置いておける仕組みを作ること。そのために便利なのが、積立制度だ。利回り次第では、気付いたら3千万円もたまっていた、というような、「タナボタ」のような結果が待っているかもしれない。では、22歳から定年退職を想定した60歳まで積み立てを続けるとしたら、いちばんおトクな運用法は?

 

「おカネを増やすときに足を引っ張るものは、税金、(運用機関の)手数料などです。そこでまず、税金対策に最適なのは、政府が準公的年金として打ち出している『確定拠出年金』。税制の優遇が魅力で、賭け金は全額、所得控除が適用され、運用益も非課税。つまり利益が出たら、そのまま全額が再投資に回ります」

 

たとえば月額1万円ずつ積み立てたとしたら、年間12万円が所得控除の対象になる。

 

「年収300万円くらいで、課税所得が5%のサラリーマンだと、課税される所得から年間12万円が引かれます。その結果、所得税が6千円ほど安くなるという計算になります」

 

本誌がシミュレーションした、22歳から月2万円を積み立てた場合では、ただ貯金するだけでは912万円だが、年平均3%の利回りなら約1千700万円。5%なら約2千600万円まで資産が膨れ上がる。年齢とともに掛け金を増やしたり、ほかの預貯金を増やしたりすれば、3千万円という金額も夢ではない。

 

続いて足を引っ張る要因になるのが、運用機関の手数料。さまざまな商品があるが、長期で積み立てることを目的にするなら、手数料の安い投資信託がおすすめという。ネット証券会社なら、販売手数料が無料、というところも多い。具体的には『ニッセン外国株式インディックスファンド』『日本株式インディックスe』『SMT トピックス新ディックスオープン』といった商品だ。

 

これらは日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)といった指標(インディックス)と連動した値動きをするため、「インディックス型」と呼ばれている。

 

「大きく増やそうというより、平均点が取れる商品。危ない橋は渡らず、それでよしとしましょう」

 

「平均点」とはいえ現在、アベノミクスの影響などもあり、TOPIXに連動している投資信託は年利回りが20%超。かなりのハイリターンだ。そして、こうしたインディックス型の投資信託を積み立てにすることで、投資のリスクを軽減させることもできる。

 

そして最後に、無理のない金額から始めるのがベターと北見さんはアドバイスする。

 

「たとえばネット証券会社では、投資信託を500円から積み立てることもできます。少ない金額でも、手数料が割高になるわけではないので、ワンコインからスタートするという手もありますよ」

 

記念すべき初任給から始めて、3千万円を目指せ!

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