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「経団連が発表した大手企業80社の今冬のボーナスの妥結状況(第1回集計)によると、平均額は前年比3.13%増の91万697円となり、3年連続で増加しました。90万円を超えたのはリーマン・ショック直後の’08年以来となります」(経済部記者)

 

もうすぐ到来する冬のボーナスシーズン。東証一部上場の大手企業の冬のボーナスは、今年も前年比を大きく上回ることとなった。経済アナリストの森永卓郎さんは “好調業界”のボーナス増額についてこう語る。

 

「大企業のボーナスは’08年のリーマン・ショックで大幅に下がった分を完全に回復しています。円安のおかげもあって、自動車などの輸出産業はリーマン・ショック以前の水準をも超えてきた企業が多くみられます。百貨店に代表される高級店は、富裕層の増加や、中国人観光客の爆買いなどによって業績回復傾向にあります」

 

ただ、「大企業のボーナス増額を手放しでは喜べない」とも森永さんは語る。

 

「大企業でボーナスアップが続出しているのは、正社員が減ったということも影響しています。今や非正規雇用は2千万人を超え、’95年から見ると倍になっています。なんとか大企業に残れた社員のボーナスだけを見て、社会全体が景気回復に向かっていると考えるのは大きな間違いです」

 

“爆買い”によってボーナス“爆増”となった百貨店とは対照的に、涙をのんだ“お騒がせ企業”も多い。今年7月に“不正経理”問題が報じられた東芝は、今季のボーナスは60万円と、前年に比べて30万円以上の大幅カット。

 

「東芝では、今夏のボーナスは仮払いという形で給与の約1カ月分が支払われただけでした。この冬のボーナスは、夏に支払われなかった分も合わせて支払われることになりましたが、それでも同業他社の水準の5割ほど。『これではローンが返せない』と嘆く東芝社員の声が多く届いています」(労働組合関係者)

 

また、’14年度に2千億円を超える赤字を計上し、今なお経営不振のシャープも、同業他社と比べると非常に少ない35万円。

 

「冬のボーナスは給与の1カ月分の35万円がかろうじて出ます。しかし同時に、半強制で5万円分の自社製品を購入せよという通達が会社から出ました。はっきりいって“異常事態”です」(前出・組合関係者)

 

その他くい打ちデータ偽装問題が問題になった旭化成建材を子会社にもつ旭化成は110万円と高水準を維持。そして、そのくい打ちが行われた横浜市のマンションを販売した三井不動産も130万円とこれまた高水準。しっかりボーナスをキープした2社。影響が出るのは来年以降のようだ。

 

150万人以上の組合員数を持つ産別労組のUAゼンセンの関係者は、企業の格差のみならず、“個人の格差”が広がっているとも語っている。

 

「多くの会社で、会社全体の業績連動や部門ごとの業績連動でボーナスを決めるケースが増えています。つまり、赤字になれば即ボーナスカット。東芝などがよい例でしょう。それだけでなく、同じ社内でも能力別の査定も実施されています。平均で見れば80万円のボーナスが支給されている会社でも、ある社員は30万、別の社員は130万円と、個人個人の差が大きくなりつつある傾向もありますね」

 

会社がボーナスアップでも喜べないことも!?

 

※表示額は35歳のモデル社員の受給額を、取材によって算出しています。

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