「お店から出ると、通りにヤクザがどっと集まっていた。怒鳴り合って小競り合いを繰り返していた。周りのヤクザは携帯電話で仲間を呼び、数はどんどん増えた。30人ほどの警官が出てきて制止しましたが、野次馬も増えて周囲は騒然としていました」
深夜3時の乱闘劇に、目撃者はかなり驚いたという。11月20日未明に新宿・歌舞伎町で発生した、ヤクザ約50人による乱闘事件で、警視庁は12月8日、住吉会系組長と同組幹部、松葉会系組長と同組員の4人を逮捕した。
きっかけは住吉会系幹部がタクシーに乗り込んだ際、ドアに指が挟まったと運転手と口論になったこと。居合わせた松葉会系組長が「堅気に手を出すな」と注意したところ、乱闘になったという。住吉会の関係者はこう話す。
「すぐに『乱闘を止めてください』と連絡が来た。松葉会系組長は重症を負ったと聞いた。じつはその後、松葉会系組長は『納得がいかない』といって高円寺にある住吉会系の組事務所に行き、数十人ほどのヤクザが集まり、乱闘寸前までいったらしい。すぐに警官が来て仲裁に入った」
歌舞伎町には、今回事件を起こした住吉会系や松葉会系だけではなく、分裂騒動に揺れる山口組系など多数の組事務所がある。
「3、4年前までは歌舞伎町にある組が、トラブルを防止するために月に一回食事会を開いていた。当番制をとり、歌舞伎町内で揉め事が起きたときには、当番の組が対応していた。だが、いまは食事会がなくなった。山口組分裂もあり、歌舞伎町ではトラブルが起きやすくなっている」(別の住吉会関係者)
今回の騒ぎは、すでに手打ちがおこなわれ、わだかまりはなくなったという。だが、歌舞伎町が“危ない”街であることをあらためて印象づけた。
大阪でも乱闘寸前の出来事があった。山口組系組員が振り返る。
「大阪の難波に神戸山口組傘下の組事務所がある。そこの組員と山口組傘下の組員が事務所近くですれ違ったとき口論になった。山口組系の組員数十人が事務所を包囲したが、乱闘にならずにすんだ。道頓堀で何かあればいつでも駆けつける準備がある」
山口組総本部がある神戸でも一触即発の状態が長引いている。
「神戸山口組傘下の山健組本部は神戸市花隈町にある。じつはその近くに山口組系の組が、新たに組事務所を構えるという噂が流れた。現実になれば周辺の緊張度は一気に高まるだろう。神戸に本拠地を置く山口組の直参が、神戸山口組に移るとの情報もある。年末から年始にかけて、動向に注視している」(ヤクザに詳しいジャーナリスト)
初詣客で賑わう新年の神社には、出店も多い。先月都内では、浅草「酉の市」で、山口組系と神戸山口組系の組員同士の乱闘騒ぎが起きている。これからの時期、山口組系と神戸山口組系のテキヤが鉢合わせする市場やお祭りなど、催し物も多い。別の山口組系組員はこうこぼした。
「上からは、歌舞伎町、六本木、渋谷、銀座には近づくなと言われている。ほかの組員と会っても目を合わさず、喧嘩はするなと。些細なトラブルが抗争に発展するのを警戒しているんだ」
山口組と神戸山口組の分裂騒動が長引く今、用心するに越したことはない。
(FLASH 2015年12月29日号)