(写真:アフロ)
「6月1日からの法改正では、合理性を欠く廉売などへの行政からの改善指導に従わないと50万円以下の罰金が科せられたり、酒類販売免許を取り消されることになり、厳罰化されています」
そう話すのは、北浜法律事務所の弁護士・籔内俊輔さん。6月1日から改正酒税法が施行。それに伴い、スーパーや酒の量販店では、ビールや発泡酒、チューハイなどを、5月中にまとめ買いすることを呼びかける動きも。今回の改正酒税法は、価格競争を是正するための「酒の安売り規制法」ともいわれている。
「国税庁としては、経営難に陥る中小の小売店を守る狙いもあるでしょう。とくにお酒の販売は酒税と直結します。過当競争で税収の基盤を揺るがされる懸念もあったのかもしれません。不透明なリーベートへの監視の目も、強くなっています」(籔内さん)
酒の廉価販売は以前から問題となっており、’06年には酒税法で、売上げ原価、人件費、物流費などを含めた『総販売原価』を下回る価格で、販売してはならないという基準が定められた。だが、厳しい罰則はなく、あくまでガイドラインだ。
国税庁が発表した「酒類の取引状況等実態調査の実施状況について」によると、’15年では酒の小売業者1,429場への調査に対し1,406場が、’14年でも1,401場のルール違反(合理的な価格設定がされていない等)が指摘されている。つまり、ルール違反は常態化しているのだ。
籔内さんは、気になる今後をこう続ける。
「客寄せのための“目玉商品”のようなお酒の激安販売は、少なくなるでしょう。また、今回は飲食店の“飲み放題”に対する法改正ではないですが、お酒の仕入れ価格が上がると、影響も考えられます」
全国に展開している「なんでも酒やカクヤス」は文書で《弊社といたしましても未確定な点もございますので、今回の酒税法改正に伴う取材につきましては控えさせていただきたく、お願い申し上げます》と回答している。流通アナリストの渡辺広明さんは次のように語る。
「『総販売原価』を下回る価格は違反対象となりますが、その定義があいまいなので、しばらくは“様子見”となるのでは。ただし、ビール類やチューハイなどの価格が今後、高くなるのは間違いない。小売店間の価格差は狭まってくるため、酒販においてもコンビニやネット通販の需要が高まるのではないでしょうか。いずれにしても、まだ価格が安いうちに、ある程度まとめ買いすることは、“生活防衛”につながると思います」
これからますますビールがおいしくなる季節。“過度な値上げ”はやめてほしい!