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前灯から続き、アナスタシアの旅で見てきた「祖国」についての後編です(詳しくは、第68灯をお読みください)。4つの祖国コミュニティと10軒ほどの祖国を訪問したなかで最も印象深かった、イゴリさんとタチアナさんというご年配のご夫婦が暮らしている祖国をご紹介しながら、実際の暮らしの様子をお伝えします!

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ご主人はエンジニアで、奥さまは小学校の先生だったそうです。州の支援が確立されるずっと前の15年前に、もともと果樹園だった土地2ヘクタールを自費で購入しました。セルフビルドでつくったお家や納屋や井戸などには美しい彫刻も施されているのですが、これらは全てご主人の手によるもの!

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畑では野菜や穀物を育てていて、お花も美しく植えられています。

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牛やヤギやニワトリも飼っていて、まるで家族のように仲良しです。

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祖国づくりの特徴である「生きた塀」がこちらです。

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木を植えることによって、周囲との境界線をつくります。15年前に植えた松の苗木は、こんなに大きくなって立派な塀に成長!この塀の中に入るとこのように二重に木々が並んでいます。

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生きた塀のおかげで、冬に冷たい風が吹いても敷地内は温かいそうです!

お昼になると、祖国内で採れたものを使って、手作りのお食事でもてなしてくださいました!

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スープ、ピクルス、チーズ、パン、ハチミツ、果物のジュースなどなど。あまりの美味しさと優しさに感動して涙が出そうなほど!ひとくち噛みしめるごとに、どの食材からもご夫妻が心をこめて育てたことが伝わってきます。ニワトリやヤギに毎日声をかけている姿や、実った野菜に感謝しながら収穫している姿や、丁寧に小麦を挽いている姿が目に浮かんできました。

ご夫妻は、家づくりも野菜づくりも養鶏も養蜂も何も知識がないままのスタートだったそうです。全てインターネットで調べて実践しながらこの暮らしを築いてきたとのこと。そんなお二人に祖国づくりで大変だったことは何ですかと聞いてみると、「おカネです(笑)」というお答えでした。また、祖国づくりに必要なことは何ですかとさらに聞いてみると、「強い意志。そして恐れないこと。」と答えてくれました。

わが家のオフグリッド生活も、電力自給も野菜栽培も知識ゼロでしたし、電力自給システムは合計220万円で元はとれないことも分かっていましたが、強い意志とワクワクするきもちだけで始めました。そしていまとても楽しく豊かに幸せに暮らしています。おカネを美しい未来への投資として使い、とにかく行動・実践してみて自分たちで手探りしながら暮らし創造していくうちに、幸せな人生へと繋がっていくのかもしれませんね。ご夫妻の笑顔溢れる祖国での暮らしと、わたしたちのオフグリッド生活が重なったように感じました。

祖国を巡ってみて分かったことは、みなさん特に知識がないままセルフビルドで立派な家を建てていることや、木を植えて育てることを中心にして、動植物と心を通わせながらその恩恵を受けて暮らしていることです。

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ガスや電氣や水道とグリッドしていましたが、湯水のごとく使うことは決してなく、エネルギーや水を大切に使っている慎ましい生活が伺えました。小さな太陽光パネルを屋根にとりつけて電氣を極力自給しているところや、雨水や井戸水を利用して暮らしているところも多かったです。また、トイレが水洗だったところは一軒だけで、あとの全ては外にコンポストトイレをつくって土に還し、川や海を汚さない生活をしていました。

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動植物が安定した食糧を供給できるまで育つには時間がかかるので、祖国をつくり始めたお家では、足りない食糧の分を(特に小麦などの穀物)をおカネで買って補う必要もあるようでした。しかし、それぞれが仕事をしながら祖国という家づくりでつくったマイホームで暮らしているだけであって、ベルゴロド州では支援もされているくらいですので、おカネが大きなネックになることはないように見受けられました。また、祖国コミュニティでは、そこで採れた安全な野菜や穀物を使った食品や、木でつくられたお皿やスプーンなどを売っておカネに替えています。

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自給できるものが増えれば増えるほどおカネへの依存度が低くなり、祖国産いうブランドが確立して商品が売れるようになっていく可能性もあり、これから心や暮らしがどんどん豊かになっていく未来の彼らの姿が見えました。

自然への感謝と共に生きている祖国の人たちは、いつも自然な笑顔で笑っていて、創造力に富んでいて、生命力に溢れていて、慈愛に満ちていました。コミュニティの運営をしている方が、祖国で暮らすようになってからの変化を次のように語っていたのですが、ここにその理由があるように思います。

「都会で生活をしていたころは、疲れ果ててエネルギーが枯渇していました。祖国で暮らすようになってからは、自然という場所で自分を取り戻し、森羅万象のビジョンが明確になり、考え方も変わり、直感も研ぎ澄まされるようになった感覚があります。周りをより美しくしたいと思うようになり、自然と木や花を植えたりするようになりました。また、地球が抱えているたくさんの問題がよく分かるようになって、地球の『早く解決して欲しい』という声がよく聞こえてくるようになりました。」

祖国を巡っているなかで「周りを美しくする」という言葉をよく耳にしたのですが、聞くたびに心に響きました。帰国後、さっそくわが家の菜園にハーブの苗を植えたり花の種を蒔いたりしています。周りを美しくしていくうちに、きっと自分の内面も美しくなっていき、それと同時に地球も美しくなっていき、人間と地球が調和した美しい未来に繋がるのではないかと思うようになりました。そして、地球の声に応えられるように、ガスや水などのグリッドの解決方法を見つけて取り入れて、サトウさん家が未来の美しい地球の実験室となれるように、オフグリッド生活を進化させていこうと心に誓いました!

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