(写真:THE FACT JAPAN)
再ブームの予感がする韓国ドラマ。そんな“韓ドラ”の凄ワザを、『定年後の韓国ドラマ』(幻冬舎新書)の著書もある、韓国ドラマを15年間で500作品見た、作家・藤脇邦夫が読み解く!
【第16回】女優、パク・ソルミの15年〜大ヒットドラマ出演が人生を変えた
7月現在、何回目かの放送かわからない『冬のソナタ』がまた再放送されている。だが、以前このコラムでも触れたように、放送開始から15年の歳月は作品の評価は変えなかったが、出演俳優たちの人生を大きく変えたようだ。今回は、その視点で、脇を固めていた女優のその後の歩みを再考してみたい。
『冬のソナタ』では嫉妬深い悪役的な立場で(チェ・ジウと対称的な配役)、お嬢様タイプの意地悪キャラクター「チェリン」を演じたパク・ソルミだが、適役であればあるほど、またその作品がヒットすればするほど、その役柄のイメージは良くも悪くも固定してしまう。
パク・ソルミの場合、どうやらそれはマイナスに働いたようで、実は『冬のソナタ』以降で、彼女が出演した作品で見るべきものはほとんどない。期待された大作『黄金のリンゴ』(’05〜’06年・KBS)も激動の時代を生き抜く4姉妹の長女という役は本人には全く不適格で、どう考えても家族のために自分を犠牲にして耐え忍ぶというタイプには見えない。一番相応しいのは、勝手に家を飛び出して誰かと同棲しているような配役で、その意味では、『冬のソナタ』のユン・ソクホ監督は最初からこの女優のキャラクターを見抜いていたのかもしれない。
パク・ソルミは、’13年にハン・ジェソクと結婚、出産を経て、最近久しぶりの出演作『町の弁護士 チョ・ドゥルホ』(’16年・KBS)で主人公の別れた妻を演じているが、これが『冬のソナタ』以来、初めて得た適役かもしれない。実年齢も39歳で、さすがに容姿には年月が加わっているが、ドラマの役柄としては最適の年齢ともいえる。ここではかつての意地悪な言動は影を潜め、離婚した後は一人娘の親権を勝ち取り今も弁護士というキャラクターを無難に努めている。離婚する前の回想は幸せな時間として描かれているが、それを完全に消し去るところまではいかない内的な葛藤もうまく演じている。
韓国でも、大ヒットドラマに出演したからといって決して順風満帆な俳優キャリアが保障されるわけではない。パク・ソルミにしてもこの役を得るために実に15年の歳月を要したことになる。俳優としての存在感を示しながら適役を見つけていくのがいかに難しい作業か、この点から見ても、パク・ソルミの場合は極めて興味深いサンプルといえるだろう。