後を絶たないいじめ。問題があっても学校は隠そうとする。追い詰められた親子が頼りにする探偵会社が注目されている。いじめの証拠と“犯人”をあぶりだすそのテクニックとはーー。
T.I.U.総合探偵社(東京)はこれまでに、全国から5,800件以上のいじめ相談を受け、聞き取り後、実際に調査を行った数は360件に上る。今では1日平均で1〜2件の相談がくるというから、まさに“いじめの駆け込み寺”のような探偵会社だ。探偵会社が行ういじめ調査とは、具体的に何をやるのか。
「今は個人情報保護法で、生徒の住所録が作られていないことが多い。被害者が相手の家を知っていればいいのですが、わからない場合は、あらゆる方法で住所を調べ上げる。そして被害者本人から詳しく聞き取りをして、まずはクラスや部活の中での相関図を作ります。その中からいじめの情報提供者になりやすい人物を選んでいきます」
そう語るのは、同探偵社の阿部泰尚代表(41)。相関図から調査に協力してくれそうな友達を何人か選び、被害者本人から協力を依頼してもらうのだ。了承が得られれば、阿部代表がその友達と直接、話をする。そしてより多くの情報をもらえるようにしていくそうだ。
「LINEで、被害者以外に『アイツに○○してやろうぜ』とか『このことはアイツには黙ってろよ』とか、いろんなやり取りが流れてきたりします。その画面を提供してもらい保存します。最近は暴力や嫌がらせをする実行犯とは別に、SNSを巧みに使って陰で命令する主犯格がいるパターンが非常に多い。主犯が誰かを解明してほしいという相談もかなりきます」(阿部代表・以下同)
じつは、いじめ調査は無償で行われている。阿部代表は、いじめ専門のNPO法人ユース・ガーディアンを立ち上げ、いじめ問題の解決に取り組んでいるのだ。
阿部代表によると、ツイッターの匿名の鍵付きアカウントで“こんなことをしてやった”と言って動画を上げる加害者もいるそう。その際、アカウントが見られる協力者がいれば、それを見せてもらえる。詳細な相関図を作ることは、いじめ調査の肝になるという。
「現実的に校内で何が起きているかについては、被害者の持ち物にICレコーダーを仕込んで録音します。高校生ぐらいになると、撮影もできるので、リモコン型の小型カメラを水筒や筆入れに仕込み、被害者の友達などに協力してもらって、暴行現場などを撮影してもらうこともあります」
いじめ現場をICレコーダーで録音する際は、必ず事前にシミュレーションを行っている。“痛い!”“やめてくれ!”という被害者の声だけでは、証拠として弱いからだ。暴力を振るわれている現場には、“やめろよ、○○!”“右足を蹴るのはやめろ!”など、相手の名前や殴られている場所を音声でしっかり残すための練習までやる。暴行後はすぐに、保健室やトイレに駆け込み、殴られた箇所が鮮明なうちに写真を撮るそうだ。