英国に住む4歳のザック・オリヴァーは今年5月、国内にたった一件しか症例がないという珍しい白血病の一種(near haploid leukemia)であると診断された。
この病に有効とされるCAR-T療法を英国内で実施している医療施設はなく、米国まで行かねばならない。フィラデルフィアの小児病院は、従来125万ドル(約1億4千万円)の治療費をおよそ半額の62万5千ドル(約7千万円)に割引くと申し出てくれたが、それでも高額であることに変わりはない。
「ザックの治る確率は25%ほどだと言われました。私はその25%のために全力を尽くすつもりです。3カ月前まで、ザックは健康で、騒々しい普通の男の子だったんですよ。ザックが笑うとみんなつられて笑うし、彼は恐竜博士でもあるんです」と、母親のハンナ・オリヴァー=ウィレッツは9月にニュースサイト「METRO」に語っていた。
家族はお金をかき集め、さらにクラウドファンディングサイト「Go Fund Me」で渡航費や治療費のために寄付を募り始めた。目標額は50万ポンド(約7360万円)。幸か不幸か、「英国内で唯一の症例」という”肩書”のおかげでメディアがこぞって取り上げ、彼の事情は国内外に知れ渡ることになった。オーディション番組「X-ファクター」の辛口審査員サイモン・コーウェルも5万ポンド(約730万円)を提供。Go Fund Meの寄付も加速したが、目標額にはあと10万ポンド(約1460万円)ほど足りない状態だった。
途方に暮れる家族のもとに、先週1本の電話が入った。電話口の男性は開口一番、「心配しないで」「ほら、荷造りをして」と、ハンナに促し、「ニュースサイトで読んだザックのストーリーに心を動かされた」と、不足している10万ポンドの提供を申し出たのだ。名前を尋ねても「その必要はない」と決して素性を明かさず、「いたずらじゃないからね」と言うばかり。その数時間後、銀行口座には本当に10万ポンドが振り込まれていた。家族はついに、目標額の50万ポンドを手にすることができたのだ。
「本当に本当に素晴らしいことです。他人を助けたい、と願ってくれる特別な人っているものなんですね。彼らは私たちに凄まじく大きな贈り物をしてくれました。ザックの命を贈ってくれたんです。貯金箱を空にしてもってきてくれた子たち、パンケーキをバザーで売って、その売り上げを寄付してくれた子たち……みんなのおかげです」とハンナはDaily Mailの取材に喜びを語った。
家族は来月、渡米する予定だという。良い報せがもたらされることを心から願いたい。