時代の空気や、女性の生き方を映し出し、数々の話題を生んできたテレビドラマ。懐かしの名作と共に“平成中期”をプレーバック! ヒットドラマが映し出した時代のトレンドとは? コラムニストでドラマウオッチャーのペリー荻野さんが解説してくれた。
「日本では景気の停滞、デフレが進んだ平成中期のドラマは、オリジナル脚本ではなく、書籍や漫画で人気を集めた“原作ありき”の映像化が急増しました。各テレビ局が、失敗はできないと、いっそうかまえるようになったためです」(ペリー荻野さん・以下同)
そんな空気のなか、原作に基づいたドラマで目立ったのが、若いイケメン俳優が多数出演する作品だ。『花より男子』(TBS系・’05年)、『花ざかりの君たちへ』(フジテレビ系・’07年)、『ROOKIES』(TBS系・’08年)などは、現実離れした設定に、イケメンたちがわんさか! 自分の“推しメン”を見つけて楽しんだ思い出のある人も多いだろう。
「’90年代に多かった恋愛ドラマに需要がなくなっていたのです。恋愛・結婚に希望が持てないなら、せめてイケメンを見て癒されたい、そういった女性のニーズが増えたのでしょう」
ジャニーズ事務所所属のタレントがドラマで大活躍したのもこのころから。
「NHK大河ドラマ『新選組!』(’04年)に香取慎吾、宮藤官九郎脚本の『池袋ウエストゲートパーク』(TBS系・’00年)にはTOKIOの長瀬智也、『木更津キャッツアイ』(TBS系・’02年)にはV6の岡田准一と嵐の櫻井翔が出演しています。『3年B組金八先生』シリーズ(TBS系)にも、ジャニーズ事務所所属の若手が続々と出演していましたね」
イケメンたちと同時に、このころ活躍し始めたのは、“変人”たちだった。
「自称天才マジシャンと物理学教授が奇怪な事件を解き明かす『トリック』(テレビ朝日系・’00年)が大ヒットしました。清純派の美人女優だった仲間由紀恵とメンズノンノでカリスマモデルとしてもてはやされた阿部寛が、変人キャラとして出現、強いインパクトをもたらしました。『トリック』が画期的だったのは、深夜枠ならではの自由な面白さ。番組制作の予算がない中で、試行錯誤して作った深夜ドラマのパイオニアでしょう」
変人が活躍するドラマは、視聴者がドラマの世界と現実の自分とを比較することもなく、純粋なエンタメとして楽しめる背景もあったと考えられるという。『ガリレオ』(フジテレビ系・’07年)の福山雅治も“変人キャラ”と言えるだろう。
「今や人気カテゴリーとなった“お仕事ドラマ”が定番化したのも中期です。それまでも描かれてきた医師や刑事のほかにも、パイロット、弁護士といった専門性の高い職業をもつ主人公が多く描かれるようになっていきました」