誰しも、ある日突然いわれのない悪意を向けられ、理不尽な暴力の被害者になり得るーーそう自覚せざるを得ない事件は絶えることがない。米デラウェア州に住むタミー・ローレンス=ダーレイさんも、そんな被害に遭ってしまった1人だ。タミーさんは今年1月に自身の身に降りかかった恐ろしい出来事の一部始終をFacebookに綴っている。
長い手記は「私に起こった出来事です。どうかネガティブなコメントはしないでください」の一文で始まっている。
「自分の子どもたちにどう説明したらよいのでしょう。自分が見知らぬ人に殺されそうになったということを。そしてママは家に帰ってはくるけど、見た目が変わってしまったということを」
タミーさんは今年1月、夫と友人夫婦と共にドミニカ共和国にあるマジェスティック・エレガンスというリゾート地に旅行にでかけた。到着したその日は疲れてすぐに休んだが、翌日は太陽が降り注ぐビーチを堪能し、夜には80年代ミュージックをメインとしたショーを22時30分頃まで楽しんだという。
部屋に戻ってきたタミーさんは、ルームサービスを頼もうとしたが、電話から流れてくるのは「ただいま取り込み中」のメッセージ。少し時間をおいて再度コールすると「サービス時間外」と言われてしまったため、夫に「下のラウンジまでちょっと行っておつまみを買ってくる。5分くらいで戻るわ」と伝えて部屋を出た。
ラウンジまで降りたところで「海に浮かぶ月の写真が撮れるかも」とタミーさんは考え、隣の棟まで足を伸ばすことにした。しかし、建物をつなぐ通路は海に面してはおらず、途中にあるロタンダを抜けるとあたりはとても暗く、不気味なほどひっそりと静まりかえっていたという。その時、重い足音が背後から迫っていることに気づいた。足音はあっという間にタミーさんに追いつき、その人物は彼女を羽交い締めにして通路の脇にあるメンテナンスルームに引きずり込んだ。
「全ての詳細を語るつもりはありませんが、あの時私が持てる全ての力で闘ったということは知っておいてください。彼は強すぎました。数時間に渡って殴る蹴るの暴行を受け、何度も首を絞められて意識を失いました。私の体はコンクリートの階段の下の排水場に投げ入れられ、そこでも頭を蹴られ、クラブで殴られました。そしてまた殺そうと首を絞められて、穴のような場所に押し込まれたのです。何度も気を失っていたため、何をされたのか詳しいことはわかりません。とにかく、地獄でした」
その後、発見されたタミーさんは緊急搬送され、奇跡的に命を取り留めた。5日間入院し傷を修復する手術を受けたが、まだ帰国後の医療費などの問題が山積しているという。
事件現場となったマジェスティック・エレガンスは、ホテル側に責任はないと主張しているが、犯人はホテルのロゴがついた制服を着ており、あらかじめ解錠されたメンテナンスルーム前でタミーさんを襲い、叫び声が漏れないようコンクリートの階段の下で犯行に及ぶという用意周到ぶり。警察は事件現場で血まみれのモップの柄とメンテナンススタッフがかぶる帽子を発見したが、「この国ではそんなものは無意味」とタミーさんが言うように、黙殺されてしまったという。犯人捜しも行われず、今もタミーさんを襲った暴漢は野放しだ。
「あの男は、私を殺したと思ったでしょうけれど、失敗したのです。彼はまだあそこにいて、捕食者として次の獲物を待ち構えています。どうか、どうか1人で歩かないで下さい。こういった事件は頻発していて、証拠もあるというのに、犯人はまったく起訴されないのです。犠牲者には何の補償もなく、マジェスティック・エレガンス側は医療費すら払ってくれません。見知らぬ場所、いえ、よく知る場所でも、賢明に、安全を確保するように心がけて下さい」
タミーさんの告白ポストには17万7千件を超えるリアクションが寄せられ、彼女の勇気を称えるコメントも殺到している。