平和の礎でガイドの説明を聞く沖縄少年院の少年ら=12日、糸満市摩文仁の県平和祈念公園 画像を見る

 

2018年7月に沖縄市から糸満市に移転した沖縄少年院が、県平和祈念資料館と連携した平和学習に力を入れている。犯した罪と向き合う少年らは「二度と戦争を起こさない」という沖縄戦後の決意に「二度と過ちを犯さない」という自身の誓いを重ね、心に深く刻む。沖縄少年院は矯正施設としての役割に加え、学校から遠ざかっていた少年らの「学び直しの場」としても機能し始めている。

 

移転後4回目となる平和学習は12日に行われた。参加したのは退院を間近に控えた5人の少年。講話や資料館見学、壕や慰霊塔のフィールドワークを通し、1日掛けて沖縄戦を学んだ。

 

「資料館に来たことがある人?」。講話を担当した同館の新垣成美さんが問い掛けると、少年全員が手を挙げた。続いて「講話を聞いたことがある人?」と聞くと、迷いながら1人が手を挙げた。中学校を休みがちだった少年らにとって、資料館を訪れるのは小学校の遠足以来だった。

 

沖縄戦に至る歴史や戦時中の悲惨な出来事を説明した新垣さんは、最後に「あなた方の命は沖縄戦を必死に生き延びた人の命が宿っている。生まれた時点でものすごく価値がある」と力説した。父親から暴力を受けて育った少年(17)は「家では父親のDV(ドメスティックバイオレンス)、学校では先生の体罰を受けていた。自尊心が低く、強がるために入れ墨を入れたり薬をやったりしていた。自分の命に価値があると言ってくれて、自信が付いた」と、新垣さんの言葉を受け止めた。

 

資料館の常設展示、各国の戦没者の名前が刻まれた平和の礎、少年兵が潜んでいた壕も同館のガイドが紹介した。「小学生の時に聞いた話はあまり覚えていない」と口をそろえる少年ら。沖縄戦で同年代の子どもが動員されていたことに衝撃を受け、熱心に話を聞いた。ガイド役を務めた同館の長島誠さんは「たくさんの学校でガイドをするが、話を聞く態度は沖縄少年院がピカイチだ」と感心する。

 

中学校1年生の時から不登校の少年(17)は「自分と同じ年くらいの子が戦うためのことしか教えられなかった。勉強したかったはずなのに」と、沖縄戦で死んだ少年に思いをはせた。学習後、少年院に戻り「戦争の中を頑張って生き抜いた人の命を自分が受け継いでいる。悪いことをして刑務所に行くのはもったいない。自分の力で変えていく」と決意を新たにした。

 

沖縄少年院の佐竹広行統括専門官は「少年院の子はさまざまな問題を抱えている。以前は塀の中で法務教官主体の教育をしていたが、それだけでは限界があると知った。地域の力も借りながら、学び直しを進めていきたい」と語った。

 

(稲福政俊)

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