円卓会議で深夜の子連れ飲食について意見を交わす市民ら=9月6日、浦添市の港川小学校 画像を見る

 

【浦添】浦添市の松本哲治市長が掲げる「深夜の子連れ飲食の制限」に関する議論が大詰めを迎えている。市民らが意見を交わす円卓会議を終え、市長や学者らを交えた大円卓会議が26日に開かれる。条例による規制に踏み込むのか、宣言か、はたまた白紙か。今後の方向性を決定付ける大円卓会議を前に、識者の見解を交え、これまでの議論を整理する。

 

深夜の子連れ飲食の制限は、松本市長が2017年の市長選の公約として掲げた。市は18年度、就学前~小中学生の保護者にアンケートを行い、2840人から回答を得た。深夜の子連れ飲食を市が制限することに対し、約9割が「良い印象」と答えた。ここでの「深夜」は午後10時~午前4時とした。

 

今年5~9月、五つの中学校区ごとに円卓会議を開いた。民生委員や自治会長、PTA関係者ら計153人が参加し、深夜外食による子どもへの影響や対応策を議論。「生活リズムが崩れる」「たばこの副流煙が心配」など、悪影響を懸念する声が相次いだ。対応方法については「声を掛け合って親の意識を高める」と制限までは必要ないとする考えから、「条例などで罰則規定を明確化すべき」と規制を求める主張まで、多様な意見が出た。

 

松本市長は取材に「浦添からあえて一石を投じようと思った」と説明。自身の公式サイトで「深夜の子連れ飲食を制限する」とあるが、「話題になって問題を意識してもらうのが目的だ。子どもにとって何が良いのか、みんなで議論することが大切」と述べた。

 

一方、識者は疑問を投げ掛ける。

 

ひとり親やその子どもたちを支援する当事者団体しんぐるまざあず・ふぉーらむ沖縄の秋吉晴子代表は「県内のひとり親の帰宅時間は全国平均より遅い。子どもを早く寝かせるために仕方なく外食している」と指摘。「子連れ飲食する理由や背景を考えてほしい。親に責任を負わせる考え方では、とても生きづらい。『制限』ではなく、就労や配食サービスなど『支援』が必要だ」と話す。

 

琉球大教育学研究科の上間陽子教授も「良い悪いといった道徳規範に関わる話を行政がすべきではない」と強調。「子育てについて○か×かジャッジする社会を行政が一気に加速させ、しつけのハードルをさらに上げることになる。親たちはしつけているかどうか、社会の目にさらされるようになる」と懸念する。

 

大円卓会議は26日午後6時半から、浦添市てだこホールで開かれる。飲食店関係者や保護者、教員らも意見を述べる予定だ。
(真崎裕史)

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