「親や親戚などからすると、大手企業の名前が冠にある会社にお子さんが内定すればひと安心でしょう。しかし、いくら誰でも知る名を冠した企業でも、社員がすぐ辞めてしまう会社も。その実態は、過重労働なのに給料が少ない、いわゆる“ブラック企業”である場合も多いのです」
こう話すのは企業の経営事情に詳しい経済評論家の加谷珪一さん。3月1日から本格化する“就活戦線”。多くの企業が自社のホームページ上で採用情報を公開し、エントリーの受付けを開始する。
就活生を持つ人はみなこう思うのではないだろうか。「わが子、わが孫を“ブラック企業”には入れたくない」ーー。
昨今、過労自殺や労災認定の報道などで、その実態が明るみに出てきたものの、「まだまだブラック企業はさまざまな業界に存在している」と加谷さんは語る。そこで、家族が受けようとしている会社がブラックでないか、見分ける方法を加谷さんに聞いた。
■採用ホームページにある“やる気ある人歓迎”は要注意
「各社サイトの『採用ページ』は、基本的に採用コンサルタント会社に制作を外注している場合が多い。社員が笑顔を浮かべている写真も、マニュアルどおりに撮った“作り笑顔”であることがほとんどですから、雰囲気の指標にはなりえません。また、会社説明会などでも出るキーワードですが、《やる気ある人歓迎》という謳い文句は、ノルマが多いことの裏返しです」
■職種が“アヤシイ”横文字になっていないか
「一般的な《営業職》と書いても応募が来ないことに悩んでいる企業は多い。そのため、業務自体は営業なのに《提案型ソリューションビジネス》というように、巧妙に言い換えている場合があります。業務内容を横文字で表現していたり、《付加価値提供型》などまどろっこしく言い回したりしている企業には注意です」
■しつこい“営業電話”が来たら企業名を覚えておく
ふだん、忙しい家事の最中に鳴ると、とってもうるさいのが売り込みの電話だろう。ちょっと気を許して聞いてあげると、何度もかかってくる……。
「このしつこい営業電話こそ、社員が課せられている“フツーじゃないノルマ”、つまりブラックであることの証しなんです。特に顕著なのが、『ワンルームマンションを買いませんか?』と片っ端から電話をかけている不動産業界。そのほか、携帯電話の乗り換え勧誘など……。日ごろ、家にかかってきた迷惑な社名はメモを取るなどして覚えておきましょう。」
昨年より順次施行されている「働き方改革関連法」により残業時間を制限するなど、日本の労働環境は“是正”に向かっているように思えるが……?
「たしかに、経営陣からすれば過重労働を強いることができない環境に変わってきています。しかし、ブラック企業はそれによって利益を上げてきたことも事実。働き方改革によって利益を落とすことになる企業は、給料を“バッサリ”カットすることになるのではないでしょうか」
「女性自身」2020年3月10日号 掲載