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【連載】玉置妙憂の心に寄りそう人生相談<第18回>

TBS『グッとラック!』のレギュラーコメンテーターをはじめ、数々のメディアにも紹介され大反響を呼んでいる新書『死にゆく人の心に寄りそう~医療と宗教の間のケア~』(光文社)の著者・玉置妙憂さんが毎週、読者の悩みに寄りそい、言葉を贈ります。

 

【今回の相談内容】

最近、大切な母を亡くしました。この2年間は寝たきりで…意思疎通もできない状態でした。そうなる前は多少の認知症があったものの、まだ会話はできていました。ある日、肺炎にかかり命の危険もあったので、何とか生き延びてもらいたいと胃ろうおよび器官切開を選択したんです。その結果が2年間の寝たきり状態で。生きる屍のようでした。母が亡くなった今、2年前の私の選択が果たして正しかったのか、繰り返し自問自答しています。このような状態になるなら、そのまま逝かせてあければよかったなと…。でも、あの時点でそういう選択ができたかどうか。私の判断は間違っていたのでしょうか?(57歳・主婦・女性)

 

【回答】

間違っていません。過ぎたことはすべてベストチョイスだったのです。

 

私は看護師なのでいろいろ拝見してきましたけれど、つくづく「人の寿命は決まっている」と思うのです。現代医学の粋を尽くして治療をしても効なく逝ってしまった人もいれば、すべての治療をやめて「このまま逝きます」と言って何年も生きた人もいました。たぶん、私たちは生まれたときに、「〇年〇月〇日まで」と決められているのでしょうね。

 

だからお母様は、胃ろうだとか気管切開だとかに関係なく、その日までこの世にいらっしゃるお約束だったのだと思います。それは、私たちたかだか人間ごときに、伸ばしたり縮めたりできるものではないのですよ。なにをどうしようと、その日と決まっていたことなのです。だから、あなたのせいではないし、間違っていたということもありません。

 

ところでお母様、今ごろどうしていらっしゃるでしょうね。つかいきったからだをお脱ぎになって、さぞかし身軽になっていらっしゃることでしょう。「あ、今、近くにいるな」ってお感じになることなんてないですか。

 

私の夫は9年前に逝きましたが、しばしば「ハエ」になって会いに来てくれるんですよ。「ハエ」ってところがあれですけれど、ま、そのへんはご愛敬で。あなたの周りにもいらしていませんか、お母様が。

 

2年前の選択が正しかったかどうかなんて自問自答を繰り返すより、お顔を上げて周りを見ていただきたいわ。きっとお母様からのメッセージが届いているはずなんですけどねえ。

 

【プロフィール】

玉置妙憂(たまおきみょうゆう)
看護師・看護教員・ケアマネ-ジャー・僧侶。「一般社団法人大慈学苑」代表。著書『死にゆく人の心に寄りそう』(光文社新書)は8万部突破のベストセラー。NHK総合『クローズアップ現代+』、『あさイチ』に出演して大きな話題に。現在、TBS系『グッとラック!』(火曜)にコメンテーターとして出演する。4月1日よりニッポン放送『テレフォン人生相談』のレギュラーパーソナリティを務めることが決定。

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