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「おとなしく、言葉がうまく話せない子ども時代の裕一(石田星空)が、かわいらしくてね。『そうだよな〜。古関裕而先生は、こんな子どもだったに違いないな』と、思いながら『エール』を見ていました」

 

そうにこやかに語るのは萩本欽一さん(79)。NHK連続テレビ小説『エール』は、6月29日より、第1回から再放送中だ。同作は、古山裕一(窪田正孝)と、音(二階堂ふみ)が織りなす夫婦の物語。そのモデルは、昭和を代表する作曲家の古関裕而さんと、妻で歌手の金子さんだ。

 

欽ちゃんと古関さんは、芸能人や有名人とその家族が歌を競い合う『オールスター家族対抗歌合戦』(’72〜’86年・フジテレビ系)の司会者と審査員として、約12年にわたり共演していた。

 

そのほかの審査員には、歌手で作曲家の近江俊郎さん、女優で映画プロデューサーの水の江瀧子さんといった大御所が参加しており、欽ちゃんとの軽妙なトークが番組を盛り上げた。

 

欽ちゃんは、古関裕而さんとの共演を振り返る。

 

「一般の方も参加する歌番組なので、歌が“ひどい”人もいたの。そんなとき、僕が『古関先生、音程狂ってません?』と振ると、『音程ではなくて、気持ちを伝えるのが音楽ですから。ここ(心)に伝わりましたよ』『歌の下手な人なんていません。家族みんなの幸せな気持ちが伝わってきました』ってニッコリ笑うんですよ。だから、辛口コメントがポロッと出てしまう近江先生に、まずは話を振っていたんだけど(笑)」

 

当時の欽ちゃんといえば、オーディション番組『スター誕生!』(’71〜’83年・日本テレビ系)がスタートし、コメディアン・司会者として飛ぶ鳥を落とす勢いだった。しかし、古関さんら大御所たちと過ごした楽屋での時間は、“直立不動だった”そう。

 

「本番では冗談がいくらでも言えるんだけど、楽屋では緊張してしまって……。楽屋の中でもずっとお話をしているのは近江先生で、古関先生はというと、じぃ〜っとニッコリしながら話を聞いているんです。最後に近江先生から『ねえ古関先生、そうですよね!?』と言われると、『うん』とほほ笑む。これも『う』って声に出して言わないの。首をちょこんと動かすだけ」

 

欽ちゃんが楽屋で感じていた緊張は、番組開始から10年も続いたという。

 

「あるとき近江先生が『欽ちゃん、もう10年たったんだから気を使うのはやめなさい。もう座ったほうがいいよ』とおっしゃって。すると古関先生が、ご自分が座られていたところから、ちょっとお尻を上げて、“とんとん”とたたくんです。『ここに座りなさい』と口に出してそう言われるよりも、むしろ優しい感じがしました。音楽の人は、言葉じゃなく音で感情を伝えるんだ、って」

 

『エール』本編の放送は、いったん“お休み”。娯楽も制限され、気持ちがすさみやすいコロナ禍だからこそ、古関先生の音楽を聴いてほしい、と欽ちゃんは語る。

 

「世の中はいま、“これ嫌、あれ嫌”という気持ちで溢れているでしょう。でも先生の曲を聴くと、きっとそんなことは言わない人だったんだな、と思います。だって、巨人と阪神、慶應と早稲田、どちらの応援歌も作られているんですよ(笑)。それに、どれも素晴らしい曲として残っているところに、先生の人柄があらわれている。その優しさがドラマでもいっぱい描かれると思うので、僕も楽しみなの」

 

「女性自身」2020年7月14日号 掲載

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