その霊能力のために、楽屋では霊視を求める先輩芸人たちが行列をつくることもあるという、よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属の“霊がよく見える”ピン芸人・シークエンスはやとも(29)。『ホンマでっか!?TV』などへの出演も話題になり、この夏、本誌連載『ポップな心霊論』をまとめた初の著書『ヤバい生き霊』(光文社)も発売。
その発売を記念して、シークエンスはやともが、暑い夜を涼しくさせる真夏の実話怪談話を。ポップさゼロ、背筋も凍る幽霊の話とはーー。
■霊がそのホテルの1室に僕を呼び込んだのかもしれません
テレビ収録の帰り道。タクシーチケットに書き込まれた行き先が間違っていて、深夜に縁もゆかりもない土地に放り出されてしまいました。しかたなく、始発までの時間を潰そうと、近くにあったホテルに泊まることにしました。
お世辞にもきれいとはいえないホテルでしたが、ぜいたくは言っていられません。フロントにいたおじさんに「今日、これから泊まれますか?」と尋ねました。すると、おじさんは「あと1部屋ならあいてるよ。あんまり人が泊まらない部屋だけどいい?」と。
もしかして過去に事件や事故があったり、怪奇現象でも起こる部屋なのかなと思ったんですが、僕は幽霊には慣れっこですから。「大丈夫ですよ」と、その部屋に泊めてもらうことにしたんです。
始発まであと数時間だったので、寝ないで待っていてもいいかな、なんて考えていたんですが……。部屋に入った瞬間、僕は意識を失ってしまったようです。
気付くと、すでに外は明るくなっていて。僕は、ドアの前の床に突っ伏して寝ていました。「そんなに疲れてなかったのにな」と不思議に思いましたが、とっくに始発の時間は過ぎていたので、とりあえずチェックアウトすることに。
フロントへ向かうと、そこには70歳くらいのおばあさんが座っていました。「ありがとうございました」と鍵を返すと、おばあさんはけげんな顔をして「あんた、この部屋に泊まったの?」と聞いてきました。「いや、その部屋しかあいてないって言われたんですよ」と答えると、「え? ほかにお客さんなんて1人もいないよ」と。
「いや、でも、フロントのおじさんがたしかに……」と言いかけると、「ああ! はいはい」とおばあさんは急に納得したような表情になったんです。
どういうことか気になったので、渋るおばあさんにしつこく聞くと「あのね、うちのホテル、私と私の娘しか働いていないの。男の人なんて雇ってないんだよ……」と教えてくれました。
あのおじさんは幽霊だったのでしょうか。霊感のある僕に気が付いて、いたずらを仕掛けてきたのかもしれません。
【PROFILE】
シークエンスはやとも
1991年生まれ。吉本興業所属。『ホンマでっか!?TV』(フジテレビ系)などで見せた芸能人の霊視も話題に。自身のYouTubeチャンネルでも心霊話を配信中。8月4日には本連載をまとめた初の著書『ヤバい生き霊』(光文社)が発売された。
「女性自身」2020年8月18日・25日合併号 掲載