代表質問で答弁する玉城デニー知事=9月25日、那覇市の県議会 画像を見る

 

玉城デニー知事は県議会9月定例会代表質問で「性の多様性宣言(仮称)」の検討を表明した。実現すれば、都道府県の「宣言」は全国初となる。
県は年内にも有識者会議を設置し今後の方向性について議論を始める。一方、全国的にも性的少数者のカップルらを対象にパートナーシップ制度を導入する自治体が広がり、茨城県は2019年7月に都道府県で初めて導入した。

 

研究者らは「性の多様性は人権の問題」と説明。海外では性の多様性を尊重している国も多く、県が宣言を行えば「観光立県・沖縄県にとってプラスになる」と指摘している。

 

玉城知事は2年前の知事選で「誰一人取り残さない社会」の実現に向け「県LGBT宣言」を公約に掲げた。県は現在、第6次県男女共同参画計画に向け、性の多様性に関する質問を初めて盛り込んだ意識調査を実施している。その結果も踏まえ、有識者会議で宣言の内容などを検討していく。

 

性的少数者は偏見や蔑視にさらされることが多く、いじめなどの差別を受けやすい現状や、自殺を考えるリスクが高いことなどが指摘されている。

 

琉球大法科大学院の矢野恵美教授は、性的多数者と同様に性的少数者の人権を尊重しても、性的多数者の暮らしには何の影響もない一方で「特に性的少数者である子どもたちにとっては大きな意味がある」と述べ、子どもの命を守ることにつながると説明する。

 

性の多様性は「人権の問題であり、少数者の人権尊重、命の問題」とし「県のSDGsの推進にも大きく関わる」と指摘している。

 

茨城県のパートナーシップ制度では、県に宣誓書を提出した一方または双方が性的少数者のカップルに対して、県が受領証を交付する。今月6日現在、34組が制度を利用しており、受領証は、県営と24市町の公営住宅への入居申し込みや、28医療機関で面会や手術の同意の際に利用できる。

 

人権施策推進室によると、病気などの緊急事態でも医療機関でスムーズに対応できれば安心だとの声が寄せられ、「病院ごとに直接訪問して理解をお願いした。受領証によって家族と同様に考えてもらい、排除されない」と説明する。

 

東京通信大人間福祉学部の加藤慶助教は沖縄県が宣言を行えば、「LGBTの人々に対する理解が学校や地域社会でさらに促進されていく効果があることは確かだろう」と語り、観光客誘致も考えられるという。

 

性の多様性の尊重に賛成の立場の人は地域の目や関係もあり、声を直接的に表明することが難しい一方、反対の立場の人は文言の根拠や定義不足、時期尚早などを主張することがあると説明した。その上で「宣言を行う上で、さまざまな議論が行われることが予想されるが、科学的知見と人権に基づいて議論することが重要だ」と指摘した。
(座波幸代)

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