「今の状況は戦時下とよく似ています」……夏に行ったインタビューでも、そう語っていた美輪明宏さん(85)。第3波が猛威を振るい、相変わらず収束が見えないコロナ禍のなか迎える新年を、私たちはどう生きればいいのだろう? 美輪さんからの新しい1年に歩み出す希望の提言ーー。
’20年は、世界中が新型コロナウイルスに翻弄され続ける1年となりました。
ここにきて国内では東京、大阪、北海道、兵庫など各地で、一日での新規感染者数が過去最多を記録するなど、第3波の猛威は、すでに第1波、第2波を超える危険な状態だと感じております。
コロナによって、社会は一気に激変しました。
それまでは、仕事があること、買い物をすること、食事や旅行に行くことなど、皆さん日常生活の一部として、当たり前のように過ごされていたと思います。
毎日ご飯を食べること1つ取っても、それほど深く考えることはなかったのではないでしょうか。
私たちがご飯を食べるまでの過程には、大勢の人たちが関わっています。まず生産者。そこでお米や野菜などが作られるわけです。そして収穫された農産物を運搬する人や仲卸人。さらにその先には店舗で商品を販売する人たちがいます。飲食店に行けば、それらの食材を料理人が調理して提供します。
このように何人もの人の手によって、毎日のご飯がいただけるわけです。これは食以外のすべてのことにも言えます。
今まで当り前だと思っていたさまざまな日常生活が、コロナによって奪われました。しかし、それが逆に、当たり前の日常に感謝するというきっかけを作りました。これまで自分の力だと思っていたことも、じつは多くの人に支えられていることに気づいたり……。
長引く自粛生活の中で、忘れかけていた“人への感謝の気持ち”を思い出させたのは、コロナの功績かもしれません。
「女性自身」2021年1月5日・12日合併号 掲載