【今週の悩めるマダム】
“不機嫌ハラスメント=フキハラ”という言葉が話題になっていますが、うちの夫もまさしくフキハラです。機嫌が悪いと私や子どもに怒鳴り散らしたり、何か言ってもとことん無視したり、怖くて仕方ありません。ただでさえコロナでいろいろ大変なのに、夫のご機嫌とりばかりの毎日に疲れました。(東京都在住・40代主婦)
僕も子どものころ、自分の父親がフキハラでして、いつも逃げ回っておりました。今は16歳で高2の息子がフキハラ真っ盛り。「おはよう」と言っても「おはよう」はかえってきません。「何で挨拶できないの?」と怒ると「したよ。聞こえなかっただけじゃん」と文句を言います。うざいものを払いのけるような感じで睨まれておしまい。僕は「こわ」と残してそそくさと逃げております。情けないことに、最近では、声をかけられない日が続いています。
僕にまったくフキハラをしないのは、世界で唯一、自分の母だけです。それ以外の人からは本人の自覚がないまま“無意識のフキハラ”を受けてきました。僕だって、不機嫌なときはありますから、お互い様ですね。では、なぜ母さんだけは僕からの不機嫌を黙って受け止めてくれるのか、と考えてみる必要があるでしょう。もちろん母は僕が可愛い。だから、僕と母の立場では、実は、僕が優位なのです。母は盲目の愛で僕に接してきますから、それがわかる僕は、息子であるという立場を利用して、甘えます。自分のことを世界でいちばん許してくれる母だと知っているからこそ、フキハラをしてしまうのです。
外で偉そうにできない人が家の中でフキハラをするというのもあるでしょう。僕の息子はご存じのように父子家庭で長く生きています。しかも日本人ですから、フランス社会の中では少なからず浮いています。そういう環境で育った彼が唯一甘えられる相手は僕だけです。そうした経緯で僕に不機嫌をぶつけてくることを、ハラスメントという冷たい言葉でくくってしまっていいのでしょうか?
今は何でもかんでもハラスメントと呼んで人権を主張しますね。それは人類平等感の上では素晴らしいことですけど、100年前にも、1千年前にもフキハラは家族内であったと思いませんか? それを「フキハラ」というわかりやすい言葉にしてブームにするのもわかりますが、溝が埋まるとは思えない。まずお互いの優しさや愛で、その人のささくれだった気持ちを慰めたいと思う気持ちが大切じゃないでしょうか?
奥様の場合、ご主人の情報が何一つ書かれてないのが少し不公平だと感じました。ご主人は辛い社会で闘っているのではないかと想像します。だからといって、家庭内で不機嫌になっていいというわけではありません。でも、会社に行くと若手社員たちに気を使い、お客さんにも気を使い、上司には命令される。彼だってハラスメントの中にいるのです。会社員として頑張っている分、家に帰ると甘えられるのは奥様だけ。だから、まず「お疲れさま」と励ましてあげてみてください。そうすれば、ご主人の態度も改善されるはず。辛い世の中、手を取り合って生きていきたいですね。
【JINSEIの格言】
もし僕が奥様なら、ご主人の唯一の味方になってあげたいと思います。「あなたは何にも悪くない。本当に立派よ」と言い続けます。彼が甘えられるのは、世界中で奥様しかいないのです。
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「女性自身」2021年1月19日・26日合併号 掲載