薬物依存症で結婚と離婚を繰り返す母(右:エイミー・アダムス)を助けたい息子のJ・D(中央:ガブリエル・バッソ) 画像を見る

家の中で楽しめるエンタメや流行を本誌記者が体験する“おこもりエンタメ”のコーナー。今週はアメリカ白人貧困層の問題をあぶり出す作品をご紹介します。

 

■Netflix映画『ヒルビリー・エレジー −郷愁の哀歌−』独占配信中

 

昨年激しい大統領選挙戦が繰り広げられたアメリカ。1月20日12時(米東部時間)、第46代米大統領就任式を迎えますが、Netflix映画『ヒルビリー・エレジー −郷愁の哀歌−』はトランプ支持者が多かったオハイオ州が主な舞台。’17年に日本でも翻訳本が出版された実話の映画化です。

 

J・D・ヴァンスは、イェール大学ロースクールに通う優秀な苦学生。しかし就職活動中に母が薬物を過剰摂取したという連絡が入り、慌てて故郷に帰ります。薬漬けで荒れた母を前にして、J・Dは昔を思い出します。それは、男や薬物に翻弄される激情的で暴力的な母と、いつも守ってくれた祖母との、波乱に満ちた少年時代でした。

 

ヒルビリーとは“田舎者”という意味。かつて自動車や鉄鋼産業で栄えた中西部は今や「ラストベルト」(さびついた地帯)と呼ばれ、白人貧困層が多く住む地帯に。強く豊かなアメリカの復活を彼らは願って、トランプを支持していました。

 

映画ではそんな格差社会を背景に、母がどんなに落ちぶれても見捨てず守ろうとする家族の苦闘を描きます。「努力をしろ。クズになるか何者かになるかは、自分で決めろ」という祖母の言葉でJ・Dは勉強に目覚め、人生を切り開いていきます。

 

政治の影響力は当然大きいですが、人間一人ひとりの力はもっと大きいのだと、改めて感じた記者でした。

 

(文:西元まり)

 

「女性自身」2021年2月2日号 掲載

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