沖縄戦遺骨収集ボランティア「ガマフヤー」代表の具志堅隆松さん(67)は1日、那覇市泉崎の県民広場でハンガーストライキを始めた。沖縄防衛局に対し、名護市辺野古の新基地建設で埋め立てに使う土砂の沖縄本島南部からの採取計画の断念と、玉城デニー知事に対し、戦没者の遺骨が見つかっている糸満市米須の採石事業に関し、業者に対して事業の中止命令を出すことを求めている。
具志堅さんは記者団に対し、「新たな基地の建設に戦没者の遺骨が混じった土を使うことは間違っている。政府には死者に対する畏敬の念が感じられない。沖縄戦犠牲者の尊厳を守り、遺骨を守るため、ハンガーストライキをすることを決めた。遺骨を助けてほしい」と訴えた。
本島南部は76年前の沖縄戦で日米両軍による地上戦が繰り広げられた激戦地で、軍民混在の状況で多くの住民が命を奪われた。未収骨の戦没者遺骨も多く残されている。
沖縄防衛局は本島南部の糸満市と八重瀬町からは県内土砂調達可能量の7割に当たる約3200万立方メートルを調達し、新基地建設の埋め立てに使う計画で、名護市辺野古では新基地建設工事が進められている。
具志堅さんは、ハンガーストライキの実行を決めた理由として、県外の人や遺族など多くの人たちにこの問題を知ってもらい、共感を寄せてほしいと考えたという。「政府は戦没者や遺族の思いを裏切るようなことをしている。戦没者遺骨を守ってほしいという思いを共有してくれるならば、家庭で一食でも抜いて、私たちに共感する意思を一緒に示してほしい」と呼び掛けた。
糸満市と八重瀬町は県が管理する沖縄戦跡国定公園にも指定され、自然公園法で開発が規制されている。採石業者は今年1月、糸満市を通じて県に開発を届け出た。業者代表の男性は本紙の取材に対し、辺野古新基地建設の埋め立て事業への参入を視野に入れていることを明らかにしている。具志堅さんは「米須での採掘は、辺野古の需要を見越した先行開発ということが明らかになった。この業者からの届け出を知事が了承すれば、同じように他の業者も南部で緑地帯の開発が行われる可能性が高い」と危機感をあらわにした。
具志堅さんの思いに共感する宗教者らも集まり、カトリック教会名誉司教の谷大二さん(68)は「沖縄戦跡国定公園には多くの沖縄戦戦没者の慰霊碑があり、祈りの場だ。戦没者の血が染みこんだ祈りの場を知事に守ってほしい」と訴えた。
糸満市出身で沖縄戦を体験し、新基地建設予定地の辺野古に住む島袋文子さん(91)も駆けつけた。島袋さんは「戦争では、亡くなった人の血の泥水を飲んで生き延びた。戦争で殺された人の遺骨の混じった土を埋め立てに使うというのは、戦没者を二度、殺すことと一緒だ。絶対に許されないことだ」と政府の計画を批判した。
具志堅さんらは、6日までハンガーストライキを実施する。