「全ての国民がコロナ禍に我慢を強いられながらも協力し、一年以上、踏ん張ってきた。一方、政府は五輪だけは別物で、開催するための手だてを探している。そのダブルスタンダードにやるせなさや不平等を感じるのは当たり前だと思う」
五輪開催を強弁する政府の姿勢にこう疑義を唱えたのは日本オリンピック委員会(JOC)理事の山口香氏(56)。これは5月12日公開の『中日新聞Web』のインタビューで、山口氏が答えたものだ。
12日の福岡県内の新規感染者数が過去最多となる635人を記録するなど、終息どころか拡大を続けるコロナ禍。緊迫する状況を受け、『読売新聞』が7~9日の期間に実施した全国世論調査では、五輪中止派は59%と過半数超えを記録した。
3月に出演した報道番組で「『どうしてもダメな時は中止もありえる』と言うべき」と語るなど、かねて疑問符を唱え続けてきたのが山口氏だ。冒頭に続けて、山口氏はこう語った。
「数万人の関係者が集う五輪に医療スタッフは必須で、医師や看護師の協力をお願いせざるを得ない。五輪によって医療に影響が出るかもしれない状況でも開催する意義や価値を、政府やIOCは説明していない。私自身は説明できない」
JOC理事という立場でありながら、“身内”への批判を臆せず行った山口氏には称賛の声があがった。
《山口香さんの明快な理論。すごく常識的なのに、新鮮に感じる。》
《山口香さん、全くもって正しいことしか言ってない》
《JOC理事の山口香さん、内からの忠言よく仰られた。思ってることを言ってくださった》
いっぽう開催判断の最前線である政府は“精神論”を連発している。菅義偉首相(72)は「コロナに打ち勝った証の五輪」と繰り返し、丸川珠代五輪相(50)は11日に「五輪で絆を取り戻す」(丸川珠代五輪相)と発言していた。
“机上の空論”で五輪開催が実現するのか、不安は募るばかりだーー。