’19年2月に『水曜日のダウンタウン』(TBS系)をきっかけに、大御所漫才師、おぼん・こぼんの確執が広く知られるように。その後も2人の確執は同番組で紹介され、芸歴56年の高校の同級生コンビが本気のケンカをする様子はお茶の間を凍り付かせてきた。しかし、今年10月6日に放送された「おぼん・こぼん THE FINAL」でついに電撃和解を果たした。
そんな2人の素顔を、おぼんの娘の井上千尋さんと、こぼんの娘の泉水いづみさんが明かす。
泉水いづみ(以下・いづみ):もともと、お父さんとおぼんさんは高校の同級生。本当に仲よかったんですよ。私と千尋ちゃんも誕生日が2週間違いで。
井上千尋(以下・千尋):私が小学生のころ、富士急ハイランドに家族で行ったら、たまたま、“こぼんちゃん”の家族がいたことがあって。
いづみ:そうバッタリ会って!
千尋:コンビだから休みの日が一緒なんですけど、行き先も一緒になって。そこからは両家で行動を共にしました。家族ぐるみの付き合いだったんですよね。
いづみ:’00年に、私と千尋ちゃんで「くれよん」という漫才コンビを結成して、おぼん・こぼんに弟子入りしました。でも、呼ぶときは師匠じゃなくて、“お父さん”。最初に「師匠と呼ばせるべきか、お父さんでいいのか」という話があったんです。でも結局「お父さんでいいんじゃないか」ということになりました。
千尋:本人たちが師匠と呼ばれるのを嫌がったと思います。
いづみ:厳しい師弟関係もなくて、舞台の合間に一緒に遊んでいましたね(笑)。お父さんたちがステージから降りてくるときに、私たちが2人のスリッパを用意しないといけないんです。けど、お父さんたちは私たちを困らせようと、その用意しないといけないスリッパをいたずらで隠すんです。
千尋:お父さんたちというかうちのパパがね(笑)。こぼんちゃんはやらない。
いづみ:『笑点』に出演したときは、くれよんで漫才をやった後、おぼん・こぼんが出てきて、4人で親子漫才をやったんですよ。
そんな家族ぐるみで交流していた仲よしコンビに決定的な亀裂が入ったのは’15年。おぼん・こぼんが所属している漫才協会の理事選挙がきっかけだった。
長年、協会の裏方として働いてきた自負があったおぼんだったが、こぼんの得票が自分の得票を上回ったことにおぼんは激怒。漫才中に2人が殴り合う事件もおき、その溝は決定的なものになった。
千尋:あるとき、パパがワァーって叫んで暴れて、家のトイレのドアを壊したことがありました。そういうとき、家族は面倒くさいから理由を聞いたりしないんですけど、後になって思えば、ちょうど選挙の時期だったんですね。そのころ、年賀状の送り先のリストから、こぼんちゃんの名前を消せとも言われて……。
いづみ:うちは家に仕事のこととかを持ち帰らないので、そういうことはありませんでした。でも、私はよくお父さんたちと飲みに行ってたから、飲みの席でおぼんさんと一緒になることがなくなったので、なんとなくうまくいってないのかなと。でも、あそこまでとは思っていなくて……。
千尋:私も“ビジネス仲が悪い”ぐらいだと思ってたんです。’19年の放送を見て初めて、本当に仲が悪いんだと知りました。
(取材・文:インタビューマン山下)