11月5日、漫画家の楳図かずおさんが亡くなっていたことが発表された。88歳だった。
和歌山県生まれの楳図さんは小学生のころから漫画を描き始め、高校3年生のときにデビュー。『へび少女』や『おろち』といったおどろおどろしい作品で人気を博し、ホラー漫画家を代表する1人となった。そのいっぽう、トレードマークの赤と白のボーダー柄のシャツやユニークなキャラクターでメディアの人気者にも。
近年は漫画作品をほとんど発表していなかったものの’18年、ヨーロッパ最大規模の国際漫画祭で『わたしは真悟』が「永久に残すべき作品」として「遺産賞」を受賞。その作風は、世界でも高く評価されていた。
多くの読者の心を掴んで離さない楳図さんの漫画。そのなかで人気が高いのは、いったいどの作品だろうか?そこで本誌は500人の男女を対象にアンケートを実施した。
まず、第3位は『ウルトラマン』だった。ホラーのオリジナル作品のイメージが強い楳図さんだが、実は国民的ヒーローである『ウルトラマン』のコミカライズを手がけていた。『ウルトラマン』が’66年にTV放映されると同時に、楳図さんの連載も『週刊少年マガジン』でスタート。楳図さん独特の怪奇色が強いストーリーだが、『ウルトラマン』人気に拍車をかけたとも言われている。
同作についてアンケートでは《楳図かずおさんのタッチで描かれたウルトラマンが印象に残っていたから》という声や《「まことちゃん」の作者が「ウルトラマン」を描くという意外さに吃驚した》と驚きの声が。また《小さい頃に見ていたから》《幼少期にみていたので》との声も寄せられ、子供の頃の鮮烈なイメージが忘れられないという人も多いようだ。
続いて、第2位は『漂流教室』だ。’72年から’74年にかけて『週刊少年サンデー』で連載された同作。小学校ごと荒廃した未来にワープしてしまった子どもたちが、サバイバルに奮闘する姿をリアルに描いた作品で、’87年には大林宣彦監督の手によって映画化もされている。
SF的な要素が強い同作について《当時小学生だったが、怖いもの見たさで読んでいたが、その世界観に引き込まれたから》《子どもの頃恐ろしいけどやめらず、夢中になった思い出があります》《小学生の時に読んで、寝られないほど怖かった》《子供の頃に、怖いと思いながら、でも、良く読んでいたので、今でも憶えています》と「子供の時の興奮が忘れられない!」という人が相次ぐことに。また《ちょっと気持ち悪い感じが気になる》《大勢の登場人物の感情の描写があまりにリアルで胸に刺さる》と楳図さんの作風を絶賛する声も相次いだ。
そして第1位は『まことちゃん』だった。’76年から’81年まで『週刊少年サンデー』で連載されていた同作は、幼稚園児の沢田まことが主人公のギャグ漫画。中指と小指を折った「グワシ!」ポーズは社会現象となり、今でも多くの人に親しまれている。
楳図さん自身もメディアに出演する際、「グワシ!」ポーズを決めることも多く、『まことちゃん』は楳図さんきっての代表作と言えるだろう。アンケートでは《学生の時、友達が大好きでよく真似をして遊んでいたのを思い出すので懐かしくなる》《ナンセンスなギャグに笑い転げたときがあり思い出すと懐かしい気分になるから》《学校で嫌なことがあってもまことちゃんを読んで忘れた》と、多くのひとが子供時代の思い出を明かしていた。
またホラー漫画の印象が強い楳図さんが手掛けたギャグ漫画ということで《ホラーなどの作品が多かったが、明るく笑えるギャグマンガを作ってくれたのは親しみやすく感じて、作者への印象が良くなった》という声や、《あの怖い絵とギャグのコントラストが衝撃的だった》《パッとページをめくると楳図かずおさん独特の描写と表現に怖さと愛着の不思議さで読んでしまう少年の頃を思い出す》とギャグ漫画でも“楳図ワールド全開”だったことを讃える声も。
多くの名作を残した楳図さん。その作品は、今後も多くの人に読み継がれていくだろう。