「試合後の会見で大谷選手から反省の言葉が続き、それ以上突っ込んで質問できる雰囲気ではありませんでした。あんなに落ち込んでいる大谷選手を見たのはドジャース入りして初めてかもしれません」(在米ジャーナリスト)
8月21日(日本時間、以下同)、ドジャース・大谷翔平選手(31)は対戦相手・ロッキーズの本拠地「クアーズ・フィールド」で復帰後10試合目の登板。しかし、4回を投げてメジャー自己ワーストタイの9安打、5失点でKOされ、今季初の負け投手となった。
取材陣の前で大谷は、「チームに申し訳ないですし、ただただ自分の投球に不満がある。情けないなという投球内容だった」と終始、神妙な表情だった。『メジャーリーグ・完全データ選手名鑑2025』の著者でスポーツライターの友成那智さんは言う。
「この日、大谷選手が先発した『クアーズ・フィールド』は標高1千600mの高地に位置しています。そのため空気抵抗が少なく、打球は飛ぶけれど、変化球が曲がりにくく、スタミナも削られる。投手にはとても厄介な球場として知られています。
大谷選手はスライダーを66球中33球も多投して、打者の視線をかわしにいきましたが、三振も3つしか奪えなかった。あれだけ三振を奪えなかったのは珍しいです。4回にはマウンドでピッチャーライナーを右太もも付近に受けるという不運も加わりました。ベンチへと引き揚げる際には、グラブを振り上げて今にもたたきつけそうなしぐさを見せるほど、大谷選手は悔しさをにじませていましたね。
試合後のインタビューで彼があれほど反省していたのは、“勝たなくてはいけない試合”だったからなんですね。対戦相手のロッキーズはナ・リーグの最弱チームで、相手のピッチャーが防御率7点台でしたから……。
打者としては不調時も比較的強気なコメントが多い大谷選手ですが、投手としては違います。現地のファンも“こんな悲壮感あふれるオオタニを久々に見た”“珍しく感情が出ている。やはり投手のほうが好きなのだろう”といった声が出ていました」
くしくもこの日、メジャーリーグ(MLB)の公式サイトがエンゼルス在籍時代と比べ、大谷が投手としてどう変わったのかを分析したデータを公開。そのなかで際立って異なる点が3つあると指摘されていた。1つは球速が上がったこと。残り2点は“勝負球”の変化だった。前出の友成さんは続ける。
「大谷選手の決め球の代名詞・スプリットはエンゼルス時代、5球に1球、約20%の頻度で見られていたのですが、今年はわずか4%未満まで低下しているというのです。彼のスプリットはMLBの公式サイトでも“野球界で最強の球種”だと評価されていました。その代わりにスライダーを進化させた“スイーパー”を多用するようになりました。
大谷選手は’23年、右脇腹を痛める前からスプリットのコントロールに苦労し始めて、あまり投げなくなりました。そこに彼の大きな悩みがあるのかもしれません。
現在のドジャースは首位から一時陥落してしまうほど、チームの先発ローテーションに苦労しています。大谷選手は“二刀流復帰した今こそ、チームに貢献しなければ”と意気込んでいただけにショックが大きかったのでしょう」
最下位球団との対戦で負け投手となってしまった現実に、大谷は周囲が思う以上に過剰反応し、“野球人生で最大のピンチを迎えている”と感じているようなのだ。
8月13日の試合では、打者としてトリプルプレーを喫していた。炎天下の試合が続き、さすがの大谷も夏バテしているのか――。
