7月24日の木原稔官房長官(撮影:長谷川新) 画像を見る

「制裁対象となった場合に備えて、送金に困らないようアドバイスをおこなったうえで、手続きも後押しするなど親身に対応してきました」

 

8月27日、記者会見でこう語ったのは、木原稔官房長官だ。アメリカのトランプ大統領が国際刑事裁判所(ICC)の赤根智子所長を制裁対象にしたことについて、制裁前から「親身に」連絡を取っていたと説明した。

 

この発言が報道されると、Xでは、

 

《支援って、そういう個人的な事じゃないんですけど》
《赤根所長はそういう支援を求めているわけじゃないと思う》

 

など、あまりに危機感がない態度に苦言を呈する書き込みが目立った。

 

高市早苗首相も歯切れが悪い。8月19日、首相官邸で

 

「大変残念に思っています。これからも米国を含む関係国と意思疎通を継続しながら対応してまいります」

 

と、記者団に短く語るにとどめ、トランプ大統領へ制裁指定を撤回するよう申し入れるなどの対応は言及しなかった。

 

「その後、世論の反応が厳しかったからでしょうか、8月25日の会見では『日本の立場と相いれず、深刻に受け止めている』と批判のトーンを一段あげ、『日本はICCを一貫して支持している。関係国と連携しながら国際社会における法の支配の強化に取り組む』と話しました」(政治担当記者)

 

高市政権は、なぜこの問題でアメリカに真っ向から「意見」を言えないのか。アメリカ現代政治に詳しい、上智大学教授の前嶋和弘氏に聞いた。

 

「日本にとってアメリカは、安全保障では唯一の同盟国で、経済でも非常に大きなパートナーです。そのため、もしトランプ大統領を怒らせて、『もう日本は守らないぞ』『日本に対する関税を上げるぞ』と言い出されると大変です。日本としては、この問題が大きくなっては困るので、対応が後手後手になっているのです」

 

そのため、国民からは「弱腰」と見られてしまうわけだ。では、解決の方法はあるのだろうか。

 

「赤根氏を “経済的抹殺” に近い状態にしようとしているので、状況の改善はかなり難しいと思います。実は、ほかのICC幹部はすでに制裁対象になっていたのですが、日本はなんとか(赤根氏に対する制裁を)待ってもらっていた状況でした。この点は、日本政府を評価してよいと思います。

 

解決に向けて、日本にとってひとつよい面があるとすれば、この問題がアメリカ国内では『アジア発のニュース』として小さく報じられていることです。

 

トランプ大統領は『世論を気にして動く政治家』です。アメリカ国内で世論が大きくなると、引くに引けなくなってしまう。逆に、今のまま世論が盛り上がらない状態が続けば、トランプ大統領の気持ちが揺れる可能性もあります」(前嶋氏)

 

事態の解決は、9月末にニューヨークで開催される “大イベント” 国連総会が鍵になりそうだ。赤根氏は、所長就任後の2024年10月と2025年11月、国連総会に出席し、ICCの年次報告をおこなっている。今年も出席する予定だったのだが……。

 

「ICCから逮捕状が出ているイスラエルのネタニヤフ首相も出席する意向を示していたのです。そのため、反トランプで知られるニューヨークのマムダニ市長も『彼を逮捕せよ』と宣言しました(のちに「法的権限がない」と弁明)。

 

この主張がアメリカ国内で大きく取り上げられたことから、(ネタニヤフ首相と盟友のトランプ大統領は)赤根氏をアメリカに入国させないため、制裁対象指定にしたとも見られています。

 

赤根氏が国連総会に出席すると、トランプ大統領の掲げる反ICCの機運に陰りがみえるのではないか、と懸念したのでしょう。

 

国連総会で、ネタニヤフ首相の逮捕などが改めてアメリカ国民の耳目を集め、トランプ大統領の最大の支持母体でイスラエル支持のキリスト教福音派から反ICCの圧力が高まれば、解決への道は険しくなるでしょう」(前嶋氏)

 

ただ、赤根所長は制裁でアメリカへ入国できなくなり、これ以上、大きな話題にならない可能性もある。トランプ大統領の関心が下がれば、事態は好転するだろう。

 

赤根所長の任期は2027年まで。はたして、事態はどのような着地を見せるのか。

 

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出典元:

WEB女性自身

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