昨年夏、四国新幹線の実現を求める書影と要望書を関係省庁に提出した四国新幹線整備促進期成会(写真:山陽新聞/共同通信イメージズ) 画像を見る

長年の夢の実現なのか、税金の無駄遣いなのか。半世紀前の新幹線の計画が突然動き出した。

 

国土交通省は8月7日、2026年度予算に「幹線鉄道ネットワーク等に関する調査」として1億8900万円を計上し、四国新幹線と東九州新幹線などを対象とする調査受託事業者の公募を開始した。実施体制や具体的なルートなどを調査し、検討していくという。

 

岡山から、松山、高松、徳島、そして高知へ四国4県と本州を結ぶ四国新幹線構想は、1973年に全国新幹線鉄道整備法(全幹法)に基づく「基本計画路線」に位置付けられて以来、約50年間にわたり建設に向けた進展が見られない状態が続いていた。

 

東九州新幹線は、福岡県福岡市から東九州の大分県大分市、宮崎県宮崎市を経由して、鹿児島県鹿児島市に至る計画で、国が初調査をする。

 

四国新幹線の建設予定地の一つ愛媛県で「南海トラフ地震等の復旧・復興の切り札」「長年の大きな夢」と報じられていたものの、ネットなどでは肯定的な意見とともに「なぜ今更?」「本当に四国や東九州に新幹線が必要なのか?」という声も噴出している。

 

「約10年前に制定された国土強靱化計画に基づいて、大規模災害時に主要な交通網が途絶した際の『代替ルート(バックアップ)』として新幹線網を確保することが目的とされています。たとえば、建設中のリニア中央新幹線は東海道新幹線の代替ルートという立ち位置のように、山陽新幹線が災害で中断したときの備えが必要というのが建前となっているのです」

 

そう語るのは、公共事業や整備新幹線の問題に詳しいジャーナリストの樫田秀樹氏(67)だ。

 

「また、現在建設中の新幹線は北海道新幹線と、環境アセスメント段階にある北陸新幹線延伸(敦賀~大阪)しかないので、この2つが完成してしまったら、建設するところがなくなってしまう。今のタイミングで次の新幹線事業に着手しておきたいという、推進側の組織的な意図が強く働いているのではないのでしょうか」(樫田氏、以下同)

 

「南海トラフ地震」への備えは国交省の調査名目の一つだが、莫大な費用を投じて新幹線を建設したとしても、実際に巨大地震で被災すれば新幹線自体が壊滅的な被害を受ける可能性がある。

 

「特に四国新幹線(高松~松山間など)の想定ルートは、日本最大級の活断層帯である中央構造線の直上、あるいは極めて近くを走ることが想定されます。

 

リニア中央新幹線でも『トンネルを活断層に直角に通せば通過時間が短いため影響は少ない』といった極端な理屈で影響を軽視する傾向が見られましたが、熊本地震などを見ても、活断層のズレがトンネルや高架橋などの硬構造物を破断させる威力は極めて大きくなることが想定されます。

 

事実上、建設そのものが目的化しており、地学的なリスクなどの検証が後回しにされている懸念が拭えません」

 

四国新幹線等を巡っては、試算によって1.57兆円から4兆円規模まで極めて大きな幅がある。

 

「過去の新幹線建設を見ても、当初予算よりも最終事業費は倍に膨れ上がっています。たとえば、北海道新幹線では、工事中に事前予測を超えた巨大な岩盤が出現したことで、発破・撤去作業の長期化や、汚染残土が次々と発掘されたことで工事が中断し、当初2030年予定だった開業が2038年以降へ大幅延期され、事業費も1.67兆円から3.5兆円に膨れ上がりました」

 

見切り発車することが、費用の激増や開通遅延の常態化を招いているというのだ。

 

しかも、整備新幹線の建設費は、JRが支払う線路貸付料などを事前に見込み、残額を国が3分の2と地方自治体が3分の1で分担する。原資は私たちの税金だ。建設費が2倍、3倍に跳ね上がれば、その分だけ国家予算(税金)および地元の自治体財政に重い負担がかかる。

 

「事業費が膨張していたとしても、最終的にツケを払わされるのは国民・住民なのです」

 

事業化に至るまでの手続は、最短でも3~4年、長ければ10年以上を要するというが、問題なのはいったん計画が走り出したらストップをかけるのは困難な点。

 

「経済効果や概算建設費を試算する『可能性調査』では、外部コンサルタントに委託しますが、建設前提の肯定的な結果が出やすく、環境への影響を調査する環境アセスメントを実施して、プロセスや調査結果を住民説明会で地域の人たちに説明したとしても、反対意見は反映されにくいといった現実があります。

 

さらに、自治体首長(知事・市長)の意見反映を経て国交省が事業認可を行うこの決定プロセスにおいても、国会の衆議院と参議院本会議で議論されることはほとんどありません」

 

開業後に地域への経済効果も果たして期待できるのか、といった疑問も大きい。

 

今年3月26日、北海道新幹線の新青森―新函館北斗間が開業10年を迎えたものの利用者は少なく、JR北海道によると開業した2016年度は年間約227万人いた乗客が、2024年度は年間約172万人にまで減少、1日平均利用者数4700人ほど。1日平均乗車率は21%と低迷している。

 

少子高齢化が著しい地方で仮に着工したとしても、開通するのは今から10年以上先。開業しても採算が取れるのかはまったく未知数だ。

 

「今の日本では自治体(県や市)が国の決定に対して異論を唱えにくく、反対の立場を取る自治体首長や地域がバッシングを受ける風潮があります。

 

たとえば九州新幹線長崎ルートにおける佐賀県への批判や、南アルプスの環境保全や大井川の水問題などを理由に、リニア中央新幹線・静岡工区の着工に慎重な姿勢を貫いた静岡県・川勝平太前知事(78)への過度なバッシングなどが根強く存在していたのを見て、反対意見を言うのを恐れるのでしょう。

 

しかし、ちょうど一年前アメリカでは、リニア開発計画が中止になったケースがありました。住民による環境破壊反対運動に対し、地方自治体がはっきりと『NO』を突きつけ、建設を差し止める裁判では裁判所も『地域で計画されている街づくり事業が優先される』と、鉄道会社側に敗訴を言い渡しました。

 

メディアも忖度なしにこの問題を報道した結果、連邦政府や開発主体も世論と司法判断を無視できないと計画の中止・撤回が決定したのです」

 

「必要ない」という事業に「NO」を突きつけられるのか。肥大化する予算に対して建設を突き進めていいものなのか、もう一度立ち止まって冷静に考える必要があるのかもしれない。

画像ページ >【写真あり】夢は現実となるのか、半世紀前の計画が始動(他1枚)

出典元:

WEB女性自身

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