大阪府の吉村洋文知事(右)と大阪市の横山英幸市長(左・写真:共同通信) 画像を見る

大阪市内で相次ぐインフラ問題が、市民生活に影を落としている。今年6月の台風6号に伴う大雨で同市住之江区の治水施設「住之江抽水所」の大型ポンプ6基が水没。応急復旧の費用は少なくともおよそ64億円かかるが、大型ポンプ6基のうち3基が部品交換で修理可能と判明し、当初の試算約300億円から数10億円程度縮小できる見通しだ。とはいえ、復旧までに3年程度かかるという。

 

さらに、市内のゴミ処理場も定期点検などのタイミングが重なることで処理が追いつかない脆弱さを露呈させている。ゴミ処理事業は大阪市単独の事業ではないものの、9月には横山英幸市長が市民に向けて前代未聞の「ごみの分別、減量への協力」を呼びかけた。

 

「ポンプ場のトラブルについては、老朽化か設計上の問題かは調査中ですが、点検や管理のあり方を含めて行政の不作為があったと言わざるをえません。回復に時間を要する中で『水を流すな』と市民に求めるような状態は、大阪市のインフラ行政として情けない限りです。

 

ゴミ処理場に関しても同様です。かつて10数カ所あった施設を『ゴミ排出量が減る』という安易な将来予測のもとで6カ所程度にまで減らし、跡地を経済目的に活用してきました。

 

しかし、人口増加や経済活動の影響でゴミは想定ほど減らず、点検などで施設を停止すれば即座に処理不能に陥るバッファー(余白)のない体制をつくってしまったのです」

 

そう苦言を呈するのは、行政学や地方財政に詳しい立命館大学政策科学部の森裕之教授(58)。

 

市民の安全や命に直結するインフラが限界を迎える一方で、夢洲でのIR(カジノを含む統合型リゾート)や大阪万博、さらには大阪駅前の大型再開発には巨額の予算や資源が投じられ続けている。

 

現行の大阪市政の構造的な“ゆがみ”は、大阪維新の会の政治方針にあるという。

 

「今の維新市政の根底にあるのは、『狭い経済効率性』の発想です。防災やインフラ整備、医療・保健所の体制維持といった仕事は、平時には成果が見えにくい存在です。災害やパンデミックが起きて初めてその重要性がわかるものですが、発生前にどれだけ効果が出るか分からないため、お金をかけて整備しようとしない。

 

本来的にはそうした見えない部分について、市民の安全・安心を守るためにしっかりとやっていくことが行政の本来の役割であるはずなのに、それを放棄してしまっています」(森教授、以下同)

 

南海トラフ巨大地震の発生が確実視されているにもかかわらず対策が後手に回っていると指摘する。

 

問題の背景にあるのは、行政の主軸が夢洲という「ゴミの島」への巨大開発にシフトしてしまったことにあるという。

 

「インフラ整備を行うための膨大な公金を投入する口実として万博を招致し、そこへカジノを含む統合型リゾートを推進するという構図がありました。

 

しかし今、建設業界は深刻な人手不足と資材高騰、金利上昇に直面しています。夢洲開発や駅前再開発に大量の資材や施工業者、予算を投入すれば、当然ながら老朽化した水道管の更新や防災設備の増強などと競合します。

 

限られたリソースの中でどちらを優先すべきか。まともな行政であれば、市民の命と暮らしを守るインフラ整備を選ぶべきです」

 

夢洲は約390haの広大な敷地を持ち、大きく3つの区域に分けて開発が進められている。第1期区は「大阪IR」の建設エリアで投資規模は約1.5兆円、ホテルや劇場、カジノを含む大型リゾートなどを備え2030年秋頃開業を予定している。

 

2025年大阪・関西万博の跡地に計画される第2期区は、大林組が提案したサーキット場や大型アリーナ、関電不動産開発グループが提案したウォーターパークなどのプランが検討中で、投資規模は約1~1.5兆円としている。

 

大阪市民のメリットといえば、国内外から多くの観光客が訪れる国際拠点となることから、大阪市や大阪府の税収が増加し、住民サービスやインフラ維持の財源に還元されることが見込まれる、としているが、市民からは「千葉のような水害が起きたら避難できるか不安」という声が上がっている。

 

「行政や政治は、問題が起きた際に『想定外だった』と都合のよい理屈をつけて責任を回避します。また、防災やインフラの危機は『実際に事故や災害が起きて被害に遭わないと目に見えない』という特徴があります。その一方で、イベントや巨大開発のような華やかで派手な取り組みは一見すると成果を上げているように見えやすく、庶民の関心を惹きつけやすいのです。

 

しかし、足元を見れば大阪市の現状は極めて深刻です。介護保険料は全国最高水準であり、高齢者の一人暮らし世帯や引きこもり、生活保護、住宅困窮者など、生活に苦しむ人々が激増しています。足元のインフラや福祉がボロボロになっている現実を直視する必要があります」

 

時事通信の2026年9月の世論調査でも日本維新の会の政党支持率は2.1%。大阪維新の会も近年支持率が低下するなど「維新離れ」が指摘されている。

 

「大阪においても、将来への不安や生活苦の実感は確実に広がっています。市民がインフラ崩壊の危険性と市政のゆがみに気づき、暮らしの再生を求める声を大きくしていくことこそが、この悪循環を断ち切る唯一の道だと考えています」

 

民意が政治を変えられるのかどうかはこれからしだいだ。

 

画像ページ >【資料あり】横山英幸市長がXで公開した「公共施設の維持整備の推進」(他1枚)

出典元:

WEB女性自身

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