防災士で3人の子どもの母親でもある早田さん(写真:本人提供) 画像を見る

「自転車に乗っていて、地震の揺れで転んでしまった長女は、怖くてブロック塀に張り付いたらしいんです。でも、ママがダメだって言ってたっていうのを思い出したらしくて、すぐに塀から離れたそうです。もし、塀が倒れていたら……」

 

そう語るのは、気象予報士であり防災士の資格を持つ早田蛍さん(39)だ。今年7月28日に発生し、最大震度7を観測した令和8年熊本地震。早田さん自身も熊本県八代市で被災し、自宅は大きな被害を受けた。

 

防災の専門家であり、3人の子どもを育てる母親でもある早田さんが、被災経験から得た「命を守るための備え」を教えてくれた。

 

「子どもたちには、登下校時に地震があったら、こういうブロック塀は倒れてくるからね、離れなきゃいけないよ、など、自ら命を守る行動についてよく話したりしてました」(早田さん、以下同)

 

震災は、なにも家族が一緒にいるときに起きるとは限らない。実際、夫、中学1年生の長男、小学校5年生の長女、小学1年生の次男の5人家族の早田家は、震災時にはバラバラだった。早田さんの長女は、地震発生時に外出先で激しい揺れに襲われたのだ。その際、日頃から母親に言われていた教えを思い出し、とっさに身の安全を確保したという。

 

「災害報道を子どもに見せると怖いと思ってしまう人も多いでしょう。でも、怖いで終わらせるのではなく、こういう対策をとっとけば安心だし、命を落とすことはないよっていうことを伝えて、安心に変えるっていうことを心がけていたかなと思います」

 

命を守る──。日頃の防災に対して家族間のコミュニケーションの重要性を指摘する早田さんだが、防災のプロであっても、実際の被災生活では想定外の事態に直面した。

 

「自宅では、本棚に天井と突っ張るタイプの耐震ポールを使っていましたが、本棚が真ん中からピッと折れて……。まさか本棚が折れるっていうことは想定していませんでした。L字フックで補強しておくとか、もうそもそも家を建てるときに備え付けの棚にするとか、いろいろもっとやっておけばよかったなというのは思いました」

 

激しい揺れによる被害は家具の倒壊だけにとどまらなかった。

 

「洗濯機が倒れていました。その結果、ホースが外れて、帰宅するまで2時間ぐらい水が出っぱなし。家中が水浸しでした」

 

厳しい猛暑の中、停電が続く被災生活を余儀なくされる。その過酷な環境下で、本当に役に立った備えについて、早田さんは次のように語る。

 

「友人から借りた充電式の冷蔵庫付きのクーラーボックスはとても役立ちました。暑いなか、片付けをしなくてはいけませんでしたが、冷たい飲み物とかを入れて冷やすことができ、すごく助かりました。

 

小さい扇風機は用意していましたが、防災の備えは、暑いときや寒いときも想定することの大切さを実感しました」

 

さらに、断水時に欠かせないのがトイレの備えだ。

 

「10リットル、20リットルタンクで水を毎日汲みに行って流すのはかなり大変です。我が家では簡易トイレを100個ほど用意していたので、暑い中水を汲みに行ったりすることもありませんでした。また、ゴミ収集が通常通りに来てくれたので、匂いに困ることもありませんでした」

 

過酷な避難生活において、食事の備えも重要になる。早田さんは、日常の中で無理なく備蓄を行った「ローリングストック」が役立ったという。

 

「ふだん食べるものを多めに買っておいて、食べながら買い足していく『ローリングストック』がよかったです。子どもたちもふだん食べているものを食べることになるので安心です」

 

被災時はレトルト食品や炭水化物に偏りやすく、体調を崩す原因にもなりかねない。災害時に不足しがちな栄養素への配慮も欠かせないという。

 

「災害時はビタミンやミネラルが不足しがちです。新鮮な野菜は手に入らないので、海苔や切り干し大根など、普段の料理で使う乾物を多めに用意しておくと役立ちます」

 

地震への備えを見直すとともに、近年頻発する大雨災害への警戒も欠かせない。大雨の際の避難行動について、早田さんは自宅のハザードマップの確認を強く呼びかける。

 

「ハザードマップで災害リスクが想定されている区域に入っているかどうか確認することが大前提です。もし想定区域内なら、警戒レベル3で高齢者の方などは、レベル4で一般の方は避難を開始します。とりあえず命を守ることを第一に、もうレベル3かレベル4が出たら、情報が外れてもいいから逃げるんだっていう気持ちを持つことが、近年の大雨災害では必要です」

 

避難をためらう人々の心理を理解したうえで、空振りを恐れない行動が命を救うと指摘する。

 

「避難して何もなく帰るっていうことは、やっぱり避難訓練になるんですね。わざわざ避難訓練の時間を設けなくても、そこで行くことで『あ、こういうものを持っていかなきゃいけなかった』っていうのに気づくんですね」

 

専門家としての知識だけでなく、被災者としてのリアルな経験を伝えることで、人々の防災意識を高める活動を続ける早田さん。今日も力強いメッセージを発信する。

 

「大きな災害は必ず起きます。でも普段からの備えと知識があれば、災害から命を守ることができます。防災は一人ではできません。やっぱり家族と地域と周りと一緒にやっていくことが必要です」

 

■早田蛍さんプロフィール

早田蛍(はやた・ほたる) 気象予報士、防災士、気象防災アドバイザー。熊本県出身。2012年に気象予報士資格を取得。2020年7月豪雨災害時には物資センター運営に携わる。「一般社団法人日本気象予報士会 石井賞」や「福岡管区気象台長賞」を受賞。現在は「NPO法人防災WEST」所属。八代市坂本町の文化や食を未来につなぐプロジェクト「EN-NOWA」の中心メンバーとしても活動。3人の子どもを育てる母親でもある。

画像ページ >【写真あり】耐震ポールを使っていたが真ん中から折れた本棚(他2枚)

出典元:

WEB女性自身

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