「8月中旬に高崎市の桜の名所、観音山に小学生の息子2人を連れて行きました。午前中だったのですが、すでに家族連れの“クビアカハンター”たちが何組もいて、ワイワイ言いながら捕えていましたね。
うちは息子たちがクビアカツヤカミキリを触るのが気持ち悪いと言うので、息子たちが発見したら私が捕えるという感じ。1時間ぐらいで13匹捕殺し、3900円分の高崎通貨(電子地域通貨)をゲット。その報奨金で、家族4人でスーパー銭湯に行きました」(群馬県高崎市在住の40代男性・会社員)
近年、全国各地で桜やウメ、モモなどのバラ科の樹木を枯らす特定外来生物『クビアカツヤカミキリ(以下、クビアカ)』の被害が急速に拡大していることを知っているだろうか。
クビアカは幼虫が樹木の内部を食い荒らし、枯死に至らせる非常に繁殖力の高い害虫だ。
環境省と農林水産省などで構成する対策本部が、9月に決定した「クビアカツヤカミキリ防除戦略」によると、被害地域はすでに東京、大阪、愛知、徳島など22都府県、300を超える市町村にまで広がっており、2030年度を目途に被害地域の縮小を目指す方針を掲げている。
この危機的状況を重く見た政府は、10月6日、クビアカによる急速な被害拡大を受けて、2026年度予備費から約32億円(環境省約27億円、農林水産省約5億円)を支出することを閣議決定。自治体が行う被害木の伐採や薬剤防除、ネット設置などを財政面から強力に支援する体制を整えるなど、クビアカの問題は国をも動かす深刻な事態となっている。
もちろん、クビアカの被害に頭を悩ます自治体も手をこまねいているわけではない。
今夏、全国の一部自治体では、捕殺数に応じて報奨金や奨励金を交付したり、イベント形式で景品を贈ったりする“市民参加型”のクビアカ駆除の取り組みが相次いだ。
たとえば、
埼玉県川島町:成虫1匹につき現金100円を交付(1カ月半で7万匹・700万円に達し早期終了)。
埼玉県越生町:10匹につき500円分の商品券を交付。
茨城県:『いばらきカミキリみっけ隊』として、対象2種10匹につき500円分のプリペイドカードを交付。
大阪府:捕獲数を競う『サクラを守れ!クビアカツヤカミキリ【夏の陣】2026』を開催し、上位20人にAmazonギフト券などを進呈。
岐阜県:持ち込み者のうち50人に3,000円相当の県産品を進呈。
このほかにも、東京都福生市や岐阜県池田町など、多くの自治体がクビアカの成虫の捕殺に対する報奨金・奨励金制度や駆除用品の無償配布、伐採補助金を導入した。
夏以降は成虫の数が減り、ほとんどの自治体でクビアカ駆除の取り組みは終了している。
今回、その中でもとくに大きな注目を集めたのが、被害が深刻化していた群馬県高崎市だ。
県の調査によれば、市内で確認された被害木は2024年度の164本から、2025年度には565本へと急増。市内の街路樹や観音山周辺などの桜の名所でも被害が広がっていた。
そこで高崎市は8月3日、市民参加型の『クビアカハンター報奨金事業』をスタート。クビアカの成虫を捕殺した市民に対し、報奨金として1匹につき300円分の電子地域通貨「高崎通貨」を交付することに。冒頭の高崎市在住の親子も“クビアカハンター”として参加したのだ。
高崎市によると、事業開始わずか2日間で1431匹(初日のみで1170匹)、3日間で計1577匹(交付額約47万円)が市役所等に持ち込まれ、当初予算100万円の半分近くがわずか数日で達する展開となり、メディアでも大きく取り上げられた。
「これまで報奨金の申請件数は312件(10月20日現在)。捕殺後に持ち込まれたクビアカは2763匹。支払済みの報奨金は82万8900円です。持ち込まれた個体のうち、2737匹が8月中のものでした」
と語るのは、高崎市環境部環境政策課の担当者。
8月に集中した背景には、クビアカの成虫の発生時期のピークが8月頃までだったことが考えられる。
「夏休みの期間中だったこともあり、お孫さんとおじいちゃんなど、ご家族連れで持ち込まれるケースも多かったです」(同課・担当者、以下同)
特定のハンターが何度も持ち込む例は少なく、多くの市民が1回程度の参加だったというが、中には大きなビニール袋を2つに分け、1人で約200匹もの成虫を持ち込んだ“強者ハンター”もいたという。
当初、高崎市はこの事業の申請期限を8月31日までとしていたが……。
「秋口になり、現在は成虫の姿をほとんど見かけなくなりましたが、9月以降も報奨金事業は継続しています」
この事業で用意された市の予算は100万円。現在までに支払われた報奨金は82万8900円なので、確かにまだ17万円分以上の余裕が残っている。
高崎市民であれば、今からでも市内にいるクビアカの成虫を捕殺して持ち込めば、1匹につき300円分の報奨金を受け取ることが可能だ。あなたの手で、わが街の美しい桜やウメの木を守ってみてはいかがだろうか?
(※持ち込む際は、必ず事前に市の最新受付状況や提出条件などを確認してください)
画像ページ >【写真あり】幼虫がサクラなどの樹木の中に入り込み、木の内部を食い荒らしてしまう特定外来生物クビアカツヤカミキリ(他1枚)
